研究

多汗症

手掌多汗症

手掌多汗症は、精神的緊張により手掌に過剰な発汗をもたらし、日常生活に支障を来すことがある疾患です。

手掌多汗症

手のひら・足のうら・脇の下・顔などに多くの汗をかくことが多いです(不思議にも幼少期に自覚を呈する人はいません)。とくに手のひらの汗に悩んでいる人は多くひどい人ですと日常生活に全般に支障をきたすようになります。

下記に記した症状が代表的なものです。

  1. テスト用紙や書類などが汗でびしょびしょになる。
  2. 握手するの避けるようになる
  3. ハンカチやタオルを常に何枚か持ち歩いている。
  4. コップがもてなくなる

手掌多汗症の重傷度分類(塩谷の分類)

I度:手のひらが汗で湿る程度
II度:手のひらに汗の水玉ができるが、垂れるほど出ないもの
III度:手のひらから汗が垂れることがある。

手術の目安になるのはII度、III度の場合です。手術の適応については必ず医師の診察を受けてください。

手掌多汗症の病態

人の体は体温が上昇すると汗をかき下降すると汗が引きます。通常、発汗は体温調節のためにおこなわれる。しかしながら、手掌と足底だけは体温調節とは無関係に発汗します。手掌と足底は交感神経という自律神経からの信号により発汗します。

手掌の発汗の原因は特発性と続発性の2つに分けられます。続発性は他の病気の症状の一部として多汗症になるもので、甲状腺機能亢進症が代表的です。特発性の原因は20-50%家族性があると言われていますがまだはっきりとはしていません。今後研究が進めば遺伝との関係がはっきりするかもしれません。

手掌多汗症の治療法

下記に記した様々な治療方法がありますが、当院では手術方法を行っています。

  1. 内服療法:精神安定剤や抗コリン剤(汗の分泌を抑制します)
  2. 皮膚科的治療法
  3. ブロック療法(星状神経節ブロックや胸部交感神経節ブロック)
  4. 手術療法(胸腔鏡下交換神経節切除術)

手術療法

当科では本疾患に対し胸腔鏡下交感神経遮断術を手がけ、今まで47例を経験しました。

全身麻酔、分離肺換気下で行います。
この気管チューブを使用すると患側の肺の虚脱が可能になります。

手術の体位は側臥位で脇の下に2箇所の5mmの皮膚切開を行います。
手術はハーモニック(超音波メス)を用い、Th2,3レベルの交感神経幹の離断(腋下多汗症に対してはTh4レベルも追加)を行います。手術時間は片側約30分です(胸腔に癒着を認める場合は交感神経節切除が施行できない場合があります)。通常外来にて術前の検査を行い手術前日に入院、手術翌日退院という日程で行っています。
今までの症例で我々は85%の患者さんで、症状の改善があり満足を得ることができした。15%は代償性発汗(手術後に背中や胸、大腿部における発汗が増加します。この現象は手術直後約50%の人に見られますが、1-2年後に増加するとされています)を中心とした症状が持続していました。
手掌という放熱効率の良い場所の発汗が止まるため、代償として身体のほかの部分の発汗が増加すると考えられています。

この説明をみて更に興味もしくは疑問を感じたりした方は担当医までお問い合わせてください。

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