研究

肺癌と微乳頭構造

研究課題:微乳頭構造を有する肺腺癌をモデルとした癌の転移・浸潤メカニズムの解析

目的

微乳頭構造を有する原発性肺腺癌の癌細胞とストローマ微乳頭構造を有する原発性肺腺癌は早期でもリンパ節転移を来しやすく予後不良である。しかし、他の肺腺癌に比べて研究材料に乏しく、その病態解明や治療法開発のための基礎研究は限られているのが現状であり、解明されていない点が多い。そこで、当院における原発性肺腺癌の切除検体1,000例を対象として、病理検体および微乳頭構造を有する組織検体より樹立した細胞株を用いて、血管新生、増殖・浸潤能についての検討を行い、知見を踏まえて新たな肺癌治療法の開発に繋げる事を目的とする。

対象

北里大学病院呼吸器外科にて切除された原発性肺腺癌の手術検体と細胞診材料で、1,000例の予定です。

研究期間

承認日~2026年3月31日

研究実施場所

北里大学病院 呼吸器外科

研究方法

1)臨床研究

A.手術検体と細胞診材料

解析の対象は北里大学医学部呼吸器外科で切除された肺腺癌のうち、病理組織学的に微乳頭構造を有すると診断された肺腺癌の切除例の手術検体と細胞診材料です。対照群としては同時期に切除された肺腺癌で、真の乳頭状構造を示す癌で且つ微乳頭構造が陰性と判定された症例の外科的切除された手術検体と細胞診材料を用います。なお、これらは当院所定の文書により同意の得られた患者から採取された手術検体と細胞診材料です。

B.対象患者さんの臨床情報及び予後調査

対象となった患者さんの喫煙歴、合併症の有無などの詳細の臨床情報、臨床診断及び予後調査を、診療録などを用いて疫学的事項について調査します。なお、研究開始後も5年間の予後を通常の診療と同様にフォローアップします。フォローアップは外来にて通常と同様の定期的検査を行います。すなわち、3~4ヵ月に一回の血中腫瘍マーカー検索、年1~2回の胸部CT検査を含めた画像診断を施行し、肺癌再発の有無をモニタリングします。また、対象となる患者の患者ID、年齢、性別、病理診断、腫瘍の遺伝子検査の結果、予後因子(再発、転移の有無等)、生存期間についての情報を収集します。

C.免疫組織化学による切除肺組織と細胞診材料におけるEP3受容体及びVEGFR1の発現評価

D.免疫組織化学による切除リンパ節におけるEP3受容体及びVEGFR1の発現評価

E. 5年生存率 (あるいは10年生存)の検討

2)基礎研究

A. in vitro実験: 細胞株による血管新生促進因子の分泌の違い、抗腫瘍薬感受性の違いの検討

B. in vivo実験: 腫瘍接種モデルにおける腫瘍増殖・転移・予後の相違の検討

C. 免疫組織化学による切除腫瘍及び肺組織におけるEP3受容体及びVEGFR1の発現評価

D. 血中のVEGFR1陽性細胞の発現の増強、VEGF,SDF-1,Ang2濃度の測定

E. 遺伝子及びタンパクの網羅解析、オミックス解析

F. 浮遊細胞塊の形態を規定している候補遺伝子の絞りこみ

G. in vivo実験: 腫瘍接種モデルにおける腫瘍増殖・転移の検討

研究対象患者さんの安全対策

外科的に切除された病理・細胞診検体を用いるため、特に安全上の問題点にはなりません。

研究対象患者さんの人権保護

病理検査報告、臨床情報、予後情報等の取扱いについては、学校法人北里研究所の倫理指針に基づき、研究対象患者さんの機密保護について配慮します。なお、研究対象患者さんの個人情報は大学病院内においてのみ使用されます。

研究組織

研究代表者
三窪 将史 呼吸器外科学 准教授
研究協力者 佐藤 之俊 呼吸器外科学 名誉教授
塩見 和 呼吸器外科学 講師
内藤 雅仁 呼吸器外科学 助教
園田 大 呼吸器外科学 助教
近藤 泰人 呼吸器外科学 助教
松井 啓夫 呼吸器外科学 非常勤職員
林 祥子 呼吸器外科学 非常勤職員

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