胸腺摘出における低侵襲性手術

胸腺（きょうせん）を摘出する手術を行う場合、通常は胸骨縦切開や側胸部からの内視鏡手術が行われています。この胸腺という臓器は胸の中央、心臓の少し上で、胸骨という骨のすぐ後ろに位置しています。当科では、痛みも少なく、美容的にも優れた剣状突起下アプローチ（下図）による胸腺・胸腺腫摘出術と拡大胸腺全摘術を2013年から行っています。さらに、2018年からはda Vinciを用いたロボット支援手術を導入しました。

この術式の対象となる疾患は、

①正岡分類Ⅰ期の胸腺腫で、大きさが5cm以下、腫瘍の存在部位が左腕頭静脈より尾側のもの
②重症筋無力症に対する拡大胸腺全摘術
③重症筋無力症で、①と同様の胸腺腫を合併したもの

です。この低侵襲性手術と従来の胸骨縦切開の手術を比較すると、手術中の出血量が減り（平均で1/10の量）、術後の入院期間も約半分に短縮されました（文献）。なお、術中に何らかの事態が生じた場合は、安全のため従来の胸骨縦切開による手術に移行する場合もあります。

文献：Shiomi K, Kitamura E, Ono M, Kondo Y, Naito M, Mikibo M, Matsui Y, Nishiyama K, Suda T, Satoh Y. Feasible and promising modified trans-subxiphoid thoracoscopic extended thymectomy for patients with myasthenia gravis. J Thorac Dis 10: 1747-1752, 2018.