患者様へ

私たちは、常に患者さんの気持ちになって医療行為を行うことをモットーとしております。私たちが最も良いと思われる検査・治療を十分にご説明し、患者さんが納得して、検査や治療を受けられるようにしております。少しでも不安や疑問があった場合は、遠慮なくお聞きいただきたく存じます。

1)肺癌

現在肺癌は増加の一途をたどっています。検診の普及により早期の肺癌が増えていますが、依然として進行肺癌も増えています。当院では、迅速かつ正確な判断に基づき、毎週呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科で行われる合同カンファレンスという検討会で、患者さん一人一人の病状を相談します。これによって、担当医師個人の独断による偏った医療にならない体制を整えており、患者さん一人一人に対し病状に即し、安全な治療方針を決定します。

私たちは、すべての患者さんに、治療開始前に予定治療の危険性に関する十分な検査を行い、安全性を最重点に治療を実施しています。治療方法ごとに経験豊富な専門医が十分な注意を払って治療します。また、外科療法に関しては、クリニカルパスという管理方式を徹底させ、手術の安全性はきわめて高いものになっています。

標準的な肺癌手術では、胸腔鏡を併用することで身体にかかる負担を少なくし、ほとんどの患者さんは手術後7日~10日程度で退院されます。また、輸血を必要とする頻度は0.5%程度で、手術時間は3時間~4時間程度です。なお、最近では筋肉と肋骨を切らない手術も行っています。手術死亡率は0.5%程度と安全な成績です。肺癌が強く疑われる場合でも、通常の検査で術前に確定診断を得ることが困難な場合があります。そのような時は、全身麻酔下で胸腔鏡検査を行い、迅速病理検査で診断を確定し、引き続き必要な手術に移行します。

日本は世界一の長寿国です。また、肺癌患者さんも高齢化しています。その為に肺癌の治療に際して、高血圧、心臓病、糖尿病、その他の合併症をお持ちの方も数多く見られます。そのような方々に対しては、当院が総合病院であるという特性を生かし、他の専門科との連携と協力体制のもと、安全に手術が受けられる環境を整備しております。

2)転移性肺腫瘍

肺は他の臓器に発生した悪性腫瘍が転移しやすい臓器です。もともと「がん」が発生する臓器としては大腸、乳房、腎癌などがあります。それぞれのがんの原発部位の腫瘍が十分コントロールされている場合には、肺の転移巣を切除すると予後の延長が得られることが報告されています。

これら転移性肺腫瘍の手術は通常、胸腔鏡下手術で切除を行います。病巣の存在場所によって、肺の一部を切除する部分切除術や、さらに広い範囲をブロックごと切除する区域切除術などを行います。また、必要があれば肺葉切除を行う場合もあります。ただし、転移している腫瘍の数が画像上10ヵ所以上と多い場合や、特に大小さまざまな大きさの腫瘍が認められる場合には、完全には切除できないと考えています。それは、胸部CTでも直径3mm以下の腫瘍は発見できないこともあり、画像で判断されるような数多くの転移巣が存在すると考えられること、また直径1mm以下の腫瘍は手で触れても発見できないこともあるからです。その場合、専門科とのカンファレンスを行い、患者さんに最もよい方法を決定します。

3)縦隔腫瘍

縦隔とは胸部で肺・気管支以外の場所を指し、上縦隔、前縦隔、中縦隔、後縦隔に分けることができます。この縦隔に発生する腫瘍を縦隔腫瘍といいます。

縦隔腫瘍の中で最も多いのが、前縦隔に発生する腫瘍で、それは胸腺という組織に発生する胸腺腫です。胸腺腫はしばしば重症筋無力症という難病を伴います。当科では、神経内科との綿密な連携でこの難病を併発する胸腺腫の治療を安全に行っています。また、縦隔腫瘍の多くは良性であっても周囲臓器への圧迫や内部の出血や炎症により胸痛を生じることもあり、発見されたら原則として手術をお勧めします。

4)炎症性疾患

炎症性肺疾患で手術の対象となるのは、

  1. 結核が腫瘤状になった結核腫で、画像上肺癌と区別がつかないもの
  2. 病変が限局していて内科的治療で十分に軽快しないもので結核、非結核性抗酸菌症や、真菌症が挙げられます。

結核腫の場合には無症状で偶然発見される場合もありますが、それ以外の疾患では、肺炎の症状が出たり、痰や血痰が出たりすることがあります。また、結核を治療されてある程度の年月が経って慢性膿胸として経過していても、ある時感染したり、肺と膿胸がつながってしまい症状を出してきたりすることがあり、この場合は手術の必要性が生じます。

炎症は、良性の疾患なのでできるだけ胸腔鏡下手術で病変を有する肺の部分切除術や肺葉切除術を行いますが、高度の癒着などで標準的な開胸手術が必要となることもあります。膿胸の手術では、急性膿胸の一部では胸腔鏡下手術で対処できるものもありますが、慢性膿胸では標準的な開胸で手術を行います。

5)嚢胞性疾患

自然気胸、巨大肺嚢胞、進行した肺気腫が代表として挙げられます。自然気胸は突然発症する呼吸困難や胸痛などによって診断されることがあります。この中で肺気腫や肺線維症に併発して生ずる自然気胸は、それまでの肺疾患による呼吸困難の増悪と十分区別されない場合もあるので注意が必要です。原因の多くは喫煙であり、肺気腫では呼吸困難が徐々に進行するため、十分に自覚されない場合もあります。肺気腫の一部の症例では、手術により症状や呼吸機能検査成績が改善するものもあるため手術の適応となります。

これらの嚢胞性疾患に対しては、通常保存的な(内科的な)治療が優先されます。保存的な治療で軽快しない場合や再発する自然気胸、増大する巨大肺嚢胞、一部の肺気腫が当科では治療の対象となります。当科ではいずれの場合も原則的に胸腔鏡下手術で治療を行っています。

6)多汗症

手掌や腋窩の異常な多汗が特長です。足底の多汗がみられることもあります。治療の対象となるのは患者が著しい不都合を感じ、治療を希望する場合です。

手術は、胸腔鏡下に左右の胸部交感神経遮断術を行います。当院では2泊3日で手術を行っています。

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