乳房再建

担当医

乳房は授乳という機能だけでなく、身体のかたちや装いに関わり、日常生活の何気ない場面で意識される部位です。乳癌の治療では乳房の一部または全部を切除することがあり、その後の変化は、治療が一段落した後にかえって気になってくることが少なくありません。乳房再建は、失われた乳房のかたちを取り戻すことで、こうした負担をやわらげ、治療後の生活を支えることを目的とした手術です。

乳房再建外来では、乳腺外科と連携しながら

  1. 乳癌の治療を最優先としたうえで、安全に行える再建方法を選択すること
  2. 人工物・自家組織それぞれの利点と欠点を十分にお伝えし、患者さんの体格、乳癌の治療内容、生活背景に合った方法を一緒に決めること
  3. 乳房だけでなく、乳輪乳頭を含めた全体的な再建を行うこと
  4. 手術後も長期にわたって経過を確認し、必要に応じて修正手術を行うこと

を心がけて診療にあたっています。

北里大学病院形成外科・美容外科は、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の**乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施施設(施設認定番号H10281)および乳房増大用エキスパンダー/インプラント実施施設(施設認定番号ZD040)**に認定されており、常勤の責任医師3名が登録されています。人工物を用いた乳房再建を安全に実施できる体制のもと、学会が定める基準に沿って手術と長期の経過観察を行っております。

再建の方法

人工物(インプラント)による再建

組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)を胸の筋肉の下などに入れて皮膚を少しずつ伸ばし、その後シリコンインプラントに入れ替える方法です。身体の他の部位に傷が増えないこと、手術時間や入院期間が比較的短いことが利点です。一方で、被膜拘縮(インプラントの周囲が硬くなること)や感染などにより入れ替えや抜去が必要になる場合があり、放射線治療を受けた方では慎重な判断が必要です。

自家組織(自分の組織)による再建

 背中や腹部の皮膚・脂肪・筋肉を血管ごと移植して乳房をつくる方法です。当科では主に以下を行っています。

  • 広背筋皮弁:背中の広背筋と皮膚・脂肪を用いる方法です。当科では、周囲の脂肪組織を含めて採取する拡大広背筋皮弁を用いることで、比較的大きな乳房の再建にも対応しています。
  • 腹部からの再建(腹直筋皮弁・DIEP flapなど):下腹部の皮膚と脂肪を、腹直筋または腹直筋を栄養する血管とともに用いる方法です。DIEP flapは腹直筋をできるだけ温存し、血管(穿通枝)のみを含めて移植する方法で、腹壁への影響を抑えることを目指します。組織量が多く、やわらかく自然な感触が得られやすい方法ですが、下腹部の組織を用いるため、今後の妊娠・出産を予定されている方には原則としてお勧めしていません。また、以前に腹部の手術を受けられた方では、傷の位置によって適応が異なります。

乳輪乳頭の再建

乳房のふくらみができた後、時期をみて乳輪乳頭を再建します。局所の皮膚を用いて乳頭のかたちをつくり、乳輪は植皮や医療用のタトゥー(刺青)によって色調を近づける方法があります。乳房全体の形が整ってから行うことで、位置や大きさの左右差を小さくすることができます。

再建の時期

乳房切除と同時に再建を始める一次再建と、乳癌の治療が終わった後に改めて行う二次再建があります。当科では乳腺外科と手術前から相談し、いずれも積極的に行っています。一次再建では乳房の皮膚が保たれるため良好な形態が得られやすい一方、術後の追加治療の内容によっては二次再建が適している場合もあります。どちらが適しているかは、乳癌の進行度、予定されている治療、患者さんのご希望をふまえて決定します。

リスク低減(予防的)乳房切除後の再建

遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)と診断された方などに対して、発症予防を目的とした乳房切除が行われることがあります。当院では、遺伝カウンセリング部門・乳腺外科と連携し、この場合の乳房再建にも対応しています。適応や保険診療の取り扱いについては個別に異なりますので、外来でご説明します。

乳房再建は、必ず受けなければならない治療ではありません。再建を行わないという選択も、時間をおいてから考えるという選択も尊重されるべきものです。手術の内容や経過について知ったうえで判断していただくことが大切ですので、迷っておられる段階でも遠慮なくご相談ください。