トップページ > 研修・入局のご案内 > 研究部門紹介 > 泌尿器科研究

研究部門紹介


泌尿器科研究部門

部門長:松本 和将

部門長:松本 和将

本部門は、臨床・研究データを蓄積・解析・発表し、さらに北里泌尿器科originalな研究を推進することを目的としています。

近年、欧米を中心に治療のアルゴリズムやガイドラインが作成されており、本施設においても積極的に取り入れ診療を行っています。北里泌尿器科は診療症例数が多く、研究内容も腫瘍、小児、移植、腎代替療法、内分泌、感染症、結石および手術手技と多岐にわたります。本施設で得られた貴重な臨床データを、欧米や全国レべルの諸学会に発表し、多くの学会賞を受賞しています。本施設のfacultyは、全員海外留学を少なくとも2年は経験しており、resident指導に関しても経験が豊富です。そして、residentらは、専門医取得までに少なくとも年2回の各種学会での発表を行う機会が得られます。また、臨床的に稀な症例や臨床研究を、自ら論文として執筆しています。

臨床データをまとめ、解析、発表する中で、多くのclinical questionが析出してきます。その疑問を臨床に還元するだけではなく、その命題を基礎的研究へ転換し解決する試みも多く行われています。主として疾患関連蛋白の同定、機能解析を行い、診断・治療法への応用を目指しています。そして、未知や未周知の蛋白に遭遇することも少なからず認められます。新規疾患関連蛋白は学会発表、論文執筆のみならず、本学の研究支援センターの助言・支援のもと特許申請を行っています。Chief resident終了後に基礎研究に従事する期間を設け、博士号取得を目指しています。また、海外留学へも多くの医員を派遣しています。

なぜ、臨床医を目指しているのに研究と思うかもしれません。博士号の形骸化が指摘され、教育機関の教員職(診療講師以上)や国公立病院の役職(部長職)以外には不要とまで考えられてきました。しかし、前期研修医制度の必修化やマッチング制度の導入により、現在では大学医局を離れた医師(後期研修終了)の身分を保証できるものは専門医(認定医)と博士号しかありません。つまり、博士号の意義が見直されているのです。北里泌尿器科では、臨床経験や手術手技だけではなく、基礎的視点、世界的視点からも考察できる、research mindを持った臨床医の育成を心がけています。

5-1 基礎研究班

松本 和将


図1

主にプロテオームやペプチドミクスを用いて疾患関連蛋白の同定を行っています。現在までに、前立腺癌、尿路上皮癌、腎細胞癌、腎移植関連の新規蛋白の同定が行われました。検出蛋白の機能解析や予後因子としての有用性を検討し、欧米や全国レべルの諸学会において学会発表、論文執筆、さらに特許取得も行っています。また、公的競合的研究費(日本科学振興会科学研究費補助金や厚生労働科学研究費補助金等)の取得も毎年行っています。さらに、本方法を使用し、尿路結石の発症機構や尿路感染症・性感染症の薬剤耐性獲得機構の解明にも取り組んでいます。

本学は生命科学を主体とした大学であり、理学部、医療衛生学部、薬学部と共同研究を行い、基礎的研究の推進を行っています。他施設では得ることのできないuniqueな発想、実験、discussion、brain storming を経験することができます。博士号取得のみならず、本課程で培ったresearch mind は必ずやresidentのcarrier passに役立つものと考えています。

1 新規疾患関連蛋白の検出(取得特許 2件、新規特許 2件申請済み)
2 各種蛋白の治療効果に関する動物実験
3 新規蛋白の臨床への応用(ELISA 構築を含む)
4 ペプチドワクチン療法の基礎的研究おより臨床応用
5 尿路結石の発症機構解明の検討
6 尿路感染症、性感染症に関しての薬剤耐性機構解明の検討
5-2 臨床研究班

高口 大


部門長:高口  大

EBM(Evidence-based Medicine:根拠に基づいた医療)は1991年にカナダのGorden Guyattが提唱した後、世界中に広がり、今日の日本の医学教育においては、EBMが当然のこととして教育されています。日本の医療現場においてもEBMという診療理念が重視されるようになり、そこかしこで『エビデンス』という言葉が聞かれるようになった。EBMは「最善のエビデンス」を基に、「医師の経験」、そして「患者の価値観」を考え合わせて、より良い医療を目指そうとするものでありますが、ここにエビデンスが欠如すると医師個人の経験や勘だけにたよる「独りよがりな医療」に陥る危険があり、エビデンスは最善の医療を提供するのに不可欠なものであると考えられています。


図2

さて、そのエビデンスは臨床研究・臨床試験の結果から作られるものです。北里泌尿器科の臨床研究班は、それぞれの臨床部門(一般泌尿器科部門臨床部門、泌尿器科腫瘍部門、腎移植・腎代替療法部門、低侵襲治療・ロボット手術部門)で生じたclinical question を解決すべく臨床研究・臨床試験を行っています。clinical questionといっても、既にその答えが存在するquestionであることもあり、部門内で十分に関係論文を検討、議論した上で、そのquestionに見合った研究デザインを計画します。研究デザイン、ランダム化割付や統計学的な問題が当臨床研究班で解決できない場合は、北里大学医学部にある北里臨床研究センターという臨床研究をサポートする部署に相談することも可能です。また治験や医師主導試験を遂行する際には、北里大学病院の臨床試験センターの治験コーディネーター(CRC:clinical research coordinator)の協力により円滑に臨床試験が行える環境が整っています。