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研究部門紹介


一般泌尿器科部門

部門長:高口 大

部門長:高口  大

一般泌尿器科部門では、「尿路結石症」、「尿路性器感染症」、「泌尿器内分泌疾患」、「男性機能不全・男性不妊」、「排尿障害・下部尿路機能障害」といった疾患を取り扱います。直接的に生命に危険を及ぼす可能性は低い疾患が多いですが、放置すれば重症化し得る疾患も多数含まれ、その取り扱いには十分な知識と技能が必要です。疾患の特殊性から、北里大学病院のみならず、近隣の関連施設で積極的に治療を行っている疾患もあります。そのため、関連施設と綿密に連携したトレーニングを行う様に心掛けています。
尿路結石症と尿路性器感染症は、泌尿器科一般外来診療において最も良く遭遇する疾患です。尿路結石症の治療は関連施設が中心となりますが、確実な診断と治療が行える様、知識と技能の習得に努めます。
泌尿器内分泌疾患は、その診断において、内分泌代謝内科との連携が必要となります。内科での検査結果を当科でも十分に確認し、治療適応を十分に検討した上で、腹腔鏡下手術を中心とした外科的治療にあたります。
男性機能不全・男性不妊は、疾患が特殊なため、関連施設でのトレーニングが中心となります。
排尿障害・下部尿路機能障害も、泌尿器科一般外来診療において良く遭遇する疾患の一つです。確実な薬物療法が行える様、知識の習得に努めます。外科的治療は関連施設を中心に行っておりますが、連携してトレーニングを行う様にしています。
いずれの疾患も、一般外来診療の中心となります。より良いトレーニングが受けられる様、関連施設と綿密に連携したトレーニングプログラムを検討しています。

1-1 排尿障害班

平野 修平


図1

前立腺肥大症は、簡単に表現すれば「おしっこが出しにくくなる」疾患です。高齢男性のほとんどが経験する一般的な疾患にもかかわらず、生活の質(QOL)に直結する大変重要な疾患です。当科では初代教授の小柴健先生が、電気メスを用いた経尿道的前立腺切除術(TURP)を導入し、本邦に於ける前立腺肥大症の低侵襲治療として確立されました。現在では、その低侵襲治療の理念を更に改良しTURPに代わる低侵襲代替治療としてホルミウムレーザーによる経尿道的前立腺核出術(HoLEP)を導入しています。レーザー光を利用した治療は出血や痛みが少ないため、患者への負担を少なくします。肥大が大きく、TURP での治療は困難と判断される症例においても施行可能な次世代の治療法です(図1)。


図2

また当科では、高齢化社会を背景に尿失禁治療にも力を入れています。男性には人工尿道括約筋植込術が有用です。人工尿道括約筋は尿道の周りにシリコン製のチューブを巻き付け、その中に液体を充填することで尿道を圧迫することで尿失禁を治療します(図2)。以前は自費診療の対象でしたが(200万円以上必要でした)、2012年4月からは健康保険の適応となりました。以降、当科では30例以上の症例を集積しています。女性では骨盤臓器脱(膣から骨盤臓器(膀胱/子宮/直腸)が脱出する疾患)に併存して排尿障害が生じることが多いです。外科的治療としては、仙骨膣固定術が最も再発が少ない方法ですが、これまでは下腹部を縦に大きく切開する必要がありました。近年、腹腔鏡手術の進歩に伴い腹腔鏡下仙骨膣固定術が欧米を中心に注目を集めており、今後当科でも導入予定です。

ヒトは必ず年を取ります。加齢による身体機能の低下は一般的な現象です。既に突入しつつある高齢化社会において前述した治療のニーズは加速度的に高まっていくことが予想されます。皆さんも我々とともに、高齢になっても快適な生活を過ごせる社会の実現へ一緒に取り組みましょう。

1-2 尿路結石症班

志村 壮一朗


腎臓、尿管、膀胱、尿道といった尿路にできる結石を、尿路結石症と言います。尿路疾患の中で最も多く見られるものの一つであり、古くから存在が知られているにも関わらず、一部を除いてその発生原因は今なお明らかではありません。ひとたび尿路結石症に罹患すると、約半数の症例が再発するといわれていますが、比較的容易に治療を受けることができ、生命に危険を及ぼすことが少ないため、原因を検索する研究が進まないともいわれています。疝痛発作(激烈な痛み)が特徴的な症状で、救急搬送されることも度々あります。今日、尿路結石症の治療は、体外衝撃波砕石術、経尿道的尿管砕石術、経皮的腎砕石術といった、低侵襲な非開放手術が中心となっています。治療の特殊性より、近隣の二つの関連施設に症例を集約させ、治療を行っています。泌尿器科医として、尿路結石症の診断や治療の技術は重要であり、これらの施設でのトレーニングを必須としています。関連施設は多症例の診療を行っており、十分なトレーニングを受けることが可能です。

1-3 尿路性器感染症班

石井 大輔


泌尿器科で扱う感染症は大きく2つに大別されます。尿路感染症と呼ばれる尿路臓器の細菌やウィルス感染症と性感染症(STD)です。最も診療機会の多い細菌性膀胱炎をはじめとして腎盂腎炎、精巣上体炎、前立腺炎など尿路感染症は多岐に渡ります。外来における診療に加えて重症例では入院治療が必要な感染症の鑑別診断、治療を迅速かつ確実におこなえるように取り組んでいます。また大学病院での診療機会は少ないですが、関連病院での外来では必ず診察することとなる性感染症は、泌尿器科医にとっては重要な分野です。クラミジアや淋菌による尿道炎、梅毒、尖形コンジローマ、性器ヘルぺスなどがあります。検査方法の診断技術も向上しています。STD の正しい診断と確実な治療がおこなえるように取り組んでいます。

図3
図4
1-4 泌尿器内分泌班

津村 秀康


機能性副腎腫瘍の手術適応を正確に判断し、根治療法である腹腔鏡下副腎摘除術を安全に行うための基本知識と手技を、病棟医終了時までに習得することを目的としています。具体的には、機能性副腎腫瘍の主要疾患である原発性アルドステロン症、クッシング症候群と褐色細胞腫を中心に各疾患別の診断方法を学び、手術適応に関する充分な知識を獲得します。手術手技に関しては、当科の標準術式である腹腔鏡下副腎摘除術の基本的な知識と技術を段階的に習得します。まず、講義と実践的な手術を通して腹腔鏡下での解剖を学び、助手として積極的に手術へ参加をします。その後、段階的に術者として、泌尿器腹腔鏡手術技術認定医取得に必要である安全かつ有用な技術の経験を重ねます。手術手技の習得に留まらず、機能性副腎腫瘍に特有な術周期管理を行うことができ、診断から治療まで総合的に行える能力を持つ泌尿器専門医の育成を目指しています。

図5
1-5 男性不妊班

森 亘平


夫婦間において、1年以上正常な性生活を行っても妊娠に至らないものは不妊と定義され、現在10組に1組が不妊であるとされます。そのうち男性に原因があるものが約50%であり、泌尿器科が積極的に関わる領域となります。不妊の原因は遺伝子疾患、脳下垂体・ 視床下部の内分泌障害、精巣自体の障害、精子輸送障害まで多岐にわたります。その原因として、最も多いのが特発性造精機能障害です。精液所見の改善には慣習的に様々な内服治療が施されますが、有用な内服治療はほとんどありません。しかし、男性不妊患者の約30%に認められる精索静脈瘤は、精巣自体の障害による男性不妊で、唯一治療効果が見込まれる疾患です。治療により約70%の患者で精液所見の改善を認め、半数で妊娠を認めたとの報告も認められます。当科では精索静脈瘤に対する手術として主に腹腔鏡下高位結紮術を行っております。様々な治療でも改善せず、最終的に人工授精を行わねばならない症例も残念ながら存在します。人工授精の妊娠率は約20%程度であり、人為的操作による遺 伝子疾患の頻度も高いと報告されています。本邦の出生率の低さから、今後さらに重要度の増す分野ですが、上記のように課題も多くあります。当科においては臨床的問題点を改善すべく関連病院にて研究、診療を進めております。

図6