専攻医(後期研修)用専門研修プログラム
産婦人科専門医は、医師として必要な基本的診療能力(コアコンピテンシー)に加え、生殖・内分泌領域、婦人科腫瘍領域、周産期領域、女性のヘルスケア領域の4領域にわたり、十分な知識・技能を持ったうえで、以下のことが求められています。
北里大学産婦人科は、関連病院とともに地域医療を守りながら多数の産婦人科医師を育んできました。「北里大学産婦人科研修プログラム」は、この歴史を継承しつつ、2018年度からの新専門医制度に合わせた形で産婦人科専門医を育成するためのプログラムとなっており、以下の特徴を持ちます。
北里大学産婦人科研修プログラムでは下記に示す通り、北里大学病院産婦人科を基幹施設とし、連携施設とともに研修施設群を形成して専攻医の指導にあたります。本プログラムは1つに地域医療を経験し習熟することにより、高度かつ安定した地域医療の提供に何が必要かを勘案する能力がある専門医の育成に寄与します。また、大学病院の研修では高度の専門性が必要とされる多数の症例、逆に経験する事が少ない性病、避妊指導、モーニングアフターピルの処方と服薬指導などの経験や習熟が可能です。指導医の一部も施設を移り施設群全体での医療レベルの向上と均一化を図ることで専攻医に対する高度に均一化された専攻医研修システムの提供を可能としています。連携施設には得意とする産婦人科診療内容があり、基幹施設を中心として連携施設をローテートする事で生殖医療、婦人科腫瘍(類腫瘍を含む)、周産期、女性のヘルスケアの4領域を万遍なく研修する事が可能となります。
日本専門医機構産婦人科領域研修委員会により、習得すべき専門知識/技能が定められています(資料1「 2017年度以降に研修を始める専攻医のための研修カリキュラム」および「専門研修プログラム整備基準」修了要件の整備基準項目53参照)。
*基幹施設である北里大学病院には、2017年8月29日に北里大学臨床教育研究棟[IPE棟:Inter Professional Education(多職種連携教育棟)]が竣工しました。北里大学病院とは2本の連絡通路で直結しており、学生や教員、医療従事者がコミュニケーションをとり、チーム医療教育の拠点となる施設です。研修医や専攻医の居室の他、4階には図書館、5階にはスキルスラボがあります。スキルスラボでは、病室や手術室を模した部屋や最先端のシミュレーターを利用して臨床のスキルを学ぶことができます。救急蘇生のチームシミュレーターや腹腔鏡、手術支援ロボット「ダヴィンチ」もあり、操作練習が可能です。さらに、病院内にも、産婦人科には専用のカンファレンス室および専攻医の控え室があり、産婦人科に関する専門書を多数保管しています。そしてインターネットにより国内外の多くの論文がフルテキストで入手可能です。
IPE:臨床研究棟
図書館
*基幹施設である北里大学病院での研修は、周産期、婦人科腫瘍、生殖内分泌チームを1-3ヵ月毎にローテーションし、バランスよく専門知識や技能を習得できるようになっています。さらに、NICU研修で新生児管理を、麻酔科研修で産科麻酔や専門的緩和医療などを学ぶ機会も提供しています。産科も婦人科も毎週月・火・水・木・金が手術日です。産科では毎日8時15分から産科麻酔専門医師やNICUスタッフ、助産師などを交えたミーティングで、前日の分娩のデブリーフィングや当日の予定分娩のブリーフィングが行われます。また、水曜日にはこれらのメンバーで全体カンファレンスを行い、病態・診断・治療計画作成の理論を学びます。さらに他科との合同カンファレンスとして、毎週木曜日13時30分からは小児科、麻酔科と、毎月1回水曜日の17時30分からは小児外科、小児科との合同カンファレンスを行っています。婦人科では毎週火曜と木曜の8時から手術症例を中心とした症例検討会を行っています。また、火曜日のカンファレンスでは全入院患者のカルテカンファレンスも行っています。これらに参加することにより婦人科疾患の病態・診断・治療計画作成の理論を学びます。毎月1回火曜日の17時30分から病理学教室と、婦人科悪性腫瘍を中心に産科・婦人科症例を1~2例選んで合同カンファレンスを行っています。産婦人科から臨床経過や画像診断についてプレゼンテーションを行い、病理学教室から細胞診・組織診についてのプレゼンテーションを行い、ディスカッションしています。ここで検討された症例が、産婦人科専攻医の学会発表・論文発表に繋がっています。さらに、随時開催される原発不明がんキャンサーボードや遺伝診療部が主催するカンファレンスに参加することで、より難しい病態や他科との連携が必要な疾患についての知識を習得することも可能です。また、1ヶ月に1回程度、指導医や専門医、専攻医が集まって産科と婦人科の合同勉強会を実施し、興味あるテーマについての論文紹介や、臨床研究や症例報告などを行う機会を設けています。そして日本産科婦人科学会、関東連合産科婦人科学会などの学術集会に専攻医が積極的に参加し、領域講習受講や発表を通じて、専門医として必要な総合的かつ最新の知識と技能の修得や、スライドの作り方、データの示し方について学べるようにしています。
*当プログラムでは、すべての連携施設において1週間に1度の診療科におけるカンファレンスおよび1ヶ月に1度の勉強会あるいは抄読会が行われています。地域で開催される研究会や勉強会には基幹施設と連携施設から専攻医が参加し、交流を図っています。
研究マインドの育成は、診療技能の向上に役立ちます。診療の中で生まれた疑問を研究に結びつけて公に発表するためには、日常的に標準医療を意識した診療を行い、かつその標準医療の限界を知っておくことが必須です。修了要件(整備基準項目53)には学会・研究会での1回の発表および、論文1編の発表が含まれています。
広く認められる質の高い研究を行うためには、良い着眼点に加えて、正しいデータ解析が必要です。そして学会発表のためには、データの示し方、プレゼンの方法を習得する必要があります。さらに論文執筆にも一定のルールがあります。当プログラムにはそれを経験してきた指導医がたくさん在籍し、適切な指導を受けることができます。
当プログラムでは、英語論文に触れることが最新の専門知識を取得するために必須であると考えており、論文は可能であれば英文での発表を目指します。原則として、基幹施設である北里大学病院において、日本産科婦人科学会等の学会発表および論文執筆を目指し、さらに連携施設在籍中も積極的に学会発表および論文執筆を目指します。
産婦人科専門医となるにあたり、(産婦人科領域の専門的診療能力に加え、)医師として必要な基本的診療能力(コアコンピテンシー)を習得することも重要です。
医療倫理、医療安全、感染対策の講習会を各1単位(60分)ずつ受講することが修了要件(整備基準項目53)に含まれています。
北里大学病院では、医療安全、感染対策に関する講習会が定期的に行われております。また、医療倫理に関する講習会も定期的に行われています。したがって、北里大学病院での研修期間中に、必ずそれらの講習会を受講することができます。さらにほとんどの連携施設で、それらの講習会が行われています。
当プログラムの研修施設群の中で、地域医療を経験できる連携施設は以下の6施設です。いずれも地域の中核的病院であり、症例数も豊富です。
連携施設(地域):北里メディカルセンター、沼津市立病院、横須賀共済病院、大和市立病院、藤沢市民病院、小田原市立病院
これらの病院は産婦人科医が不足している地域にあり、地域の強い要望と信頼のもとに、基幹施設等からの医師派遣により、地域医療を高い水準で守ってきました。当プログラムの専攻医は、これらの病院のいずれかで少なくとも一度は研修を行い、外来診療、夜間当直、救急診療、病診連携、病病連携などを通じて地域医療を経験します。いずれの施設にも指導医が在籍し、研修体制は整っています。
※ なお、プログラム研修期間中に施設状況や所属指導医の変更により上記の施設認定区分は変更となる可能性があります。詳細は統括責任者に随時ご確認ください。
1年目
内診、直腸診、経腟・腹部超音波検査、胎児心拍モニタリングを正しく行える。上級医の指導のもとで正常分娩の取り扱い、通常の帝王切開、子宮内容除去術、子宮付属器摘出術ができる。婦人科の病理および画像を自分で評価できる。
2年目
妊婦健診および婦人科の一般外来ができる。正常および異常な妊娠・分娩経過を判別し、問題のある症例については上級医に確実に相談できる。正常分娩を一人で取り扱える。上級医の指導のもとで通常の帝王切開、腹腔鏡下手術、腹式単純子宮全摘術ができる。上級医の指導のもとで患者・家族からのinformed consent (IC) 取得ができる。
3年目
帝王切開の適応を一人で判断できる。通常の帝王切開であれば同学年の専攻医と一緒にできる。上級医の指導のもとで前置胎盤症例など特殊な症例の帝王切開ができる。上級医の指導のもとで癒着があるなどやや困難な症例であっても、腹式単純子宮全摘術ができる。悪性手術の手技を理解して助手ができる。一人で患者・家族からのICの取得ができる。
北里大学産婦人科施設群では「産婦人科専門医養成コース」として、複数の「標準研修コース」の他、労働時間等に配慮をした「女性医師支援コース」を設けています。このほか、大学院進学や個別のプログラムを組むことも可能です。産休や病気療養などで休職する場合でも、6か月以内であれば、最短3年間での研修修了が可能です。また、専門医取得後には、Subspecialty専門医取得を目指す臨床研修「Subspecialty産婦人科医養成プログラム」や、リサーチマインドの醸成および医学博士号取得を目指す研修が可能です。
産婦人科専門医育成プログラムの主な研修コース例をいくつか示します。これらは研修例であり、研修医の人数によっては、標準研修コースであっても連携施設から研修を開始する場合や各施設での研修期間を調整したりする場合も起こりえます。また、大学院進学や短期留学を希望する研修医については研修内容を専門研修プログラム管理委員会で個別に検討し決定します。
予定経験症例数
1年目 | 2年目 | 3年目 |
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研修施設例 | 北里大学病院 | 北里大学 メディカル センター |
帝京大学溝口病院 | 経験予定数 (必要終了要件数) |
経腔分娩(立ち会い医) | 150 | 60 | 60 | 240(100) |
帝王切開執刀 | 10 | 20 | 10 | 40(30) |
帝王切開助手 | 60 | 20 | 20 | 100(20) |
単純子宮全摘出執刀 | 10 | 15 | 20 | 45(10) |
子宮内容除去術 | 10 | 5 | 5 | 20(10) |
腹腔鏡下手術執刀・助手 | 10 | 20 | 50 | 80(15) |
予定経験症例数
1年目 | 2年目 | 3年目 | |||
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研修施設例 | 北里大学病院 | 北里大学 メディカル センター |
相模野病院 | 北里大学病院 | 経験予定数 (必要終了要件数) |
経腔分娩(立ち会い医) | 100 | 60 | 100 | 100 | 360(100) |
帝王切開執刀 | 3 | 20 | 50 | 15 | 88(30) |
帝王切開助手 | 40 | 20 | 20 | 30 | 110(20) |
単純子宮全摘出執刀 | 3 | 15 | 15 | 12 | 45(10) |
子宮内容除去術 | 3 | 5 | 10 | 5 | 23(10) |
腹腔鏡下手術執刀・助手 | 10 | 20 | 0 | 20 | 50(15) |
予定経験症例数
1年目 | 2年目 | 3年目 | |||
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研修施設例 | 北里大学病院 | 北里大学 メディカル センター |
相模原病院 | 国立成育医療センター | 経験予定数 (必要終了要件数) |
経腔分娩(立ち会い医) | 100 | 60 | 60 | 200 | 420(100) |
帝王切開執刀 | 3 | 20 | 7 | 70 | 100(30) |
帝王切開助手 | 40 | 20 | 20 | 50 | 130(20) |
単純子宮全摘出執刀 | 3 | 15 | 12 | 0 | 30(10) |
子宮内容除去術 | 3 | 5 | 7 | 10 | 25(10) |
腹腔鏡下手術執刀・助手 | 10 | 20 | 0 | 0 | 30(15) |
予定経験症例数
1年目 | 2年目 | 3年目 | |||
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研修施設例 | 済生会 横浜市東部 病院 |
北里大学病院 | 沼津市立病院 | 済生会 横浜市東部 病院 |
経験予定数 (必要終了要件数) |
経腔分娩(立ち会い医) | 100 | 100 | 60 | 60 | 320(100) |
帝王切開執刀 | 10 | 10 | 20 | 40 | 80(30) |
帝王切開助手 | 50 | 40 | 30 | 20 | 140(20) |
単純子宮全摘出執刀 | 3 | 7 | 15 | 10 | 35(10) |
子宮内容除去術 | 5 | 5 | 5 | 10 | 25(10) |
腹腔鏡下手術執刀・助手 | 50 | 20 | 20 | 30 | 120(15) |
予定経験症例数
研修期間中に妊娠や病気のため半年以内の休職があった場合の一例
1年目 | 2年目 | 3年目 | |||
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研修施設例 | 北里大学病院 | 北里大学 メディカルセンター |
産休・病休等 | 北里大学病院 | 経験予定数 (必要終了要件数) |
経腔分娩(立ち会い医) | 100 | 60 | - | 100 | 260(100) |
帝王切開執刀 | 3 | 20 | - | 15 | 38(30) |
帝王切開助手 | 40 | 20 | - | 30 | 90(20) |
単純子宮全摘出執刀 | 3 | 15 | - | 7 | 25(10) |
子宮内容除去術 | 3 | 5 | - | 7 | 15(10) |
腹腔鏡下手術執刀・助手 | 10 | 20 | - | 20 | 50(15) |
当プログラム管理委員会は、基幹施設の指導医8名と各連携施設担当者11名の計19名で構成されています。プログラム管理委員会は、毎年12月に委員会会議を開催し、さらに通信での会議も行いながら、専攻医および研修プログラムの管理と研修プログラムの改良を行います。
主な議題は以下の通りです。
日本産科婦人科学会が主催する、あるいは日本産科婦人科学会の承認のもとで連合産科婦人科学会などが主催する産婦人科指導医講習会が行われます。そこでは、産婦人科医師教育のあり方について講習が行われます。指導医講習会の受講は、指導医認定や更新のために必須となっています。
さらに、専攻医の教育は研修医の教育と共通するところが多く、北里大学に在籍している指導医のほとんどが、「医師の臨床研修に係る指導医講習会」を受講し、医師教育のあり方について学んで、医師臨床研修指導医の認定を受けています。
当プログラムの研修施設群は、 「産婦人科勤務医の勤務条件改善のための提言」(平成25年4月、日本産科婦人科学会)に従い、「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」(日本医師会)等を用いて、専攻医の労働環境改善に努めるようにしています。
専攻医の勤務時間、休日、当直、給与などの勤務条件については、労働基準法を遵守し、各施設の労使協定に従っています。さらに、専攻医の心身の健康維持への配慮、当直業務と夜間診療業務の区別とそれぞれに対応した適切な対価を支払うこと、バックアップ体制、適切な休養などについて、勤務開始の時点で説明を受けます。
総括的評価を行う際、専攻医および指導医は専攻医指導施設に対する評価も行い、その内容は当プログラム研修管理委員会に報告されますが、そこには労働時間、当直回数、給与など、労働条件についての内容が含まれます。
近年、新たに産婦人科医になる医師は女性が6割以上を占めており、産婦人科の医療体制を維持するためには、女性医師が妊娠、出産をしながらも、仕事を継続できる体制作りが必須となっています。日本社会全体でみると、現在、女性の社会進出は先進諸国と比べて圧倒的に立ち遅れていますが、わたしたちは、産婦人科が日本社会を先導する形で女性医師が仕事を続けられるよう体制を整えていくべきであると考えています。そしてこれは女性医師だけの問題ではなく、男性医師も考えるべき問題でもあります。
当プログラムでは、ワークライフバランスを重視し、夜間・病児を含む保育園の整備、時短勤務、育児休業後のリハビリ勤務など、誰もが無理なく希望通りに働ける体制作りを目指しています。
総括的評価を行う際、専攻医は指導医、施設、研修プログラムに対する評価も行います。また指導医も施設、研修プログラムに対する評価を行います。その内容は当プログラム管理委員会で公表され、研修プログラム改善に役立てます。そして必要な場合は、施設の実地調査および指導を行います。また評価に基づいて何をどのように改善したかを記録し、毎年日本産婦人科学会中央専門医委員会に報告します。
さらに、研修プログラムは日本専門医機構からのサイトビジットを受け入れます。その評価を当プログラム管理委員会で報告し、プログラムの改良を行います。研修プログラム更新の際には、サイトビジットによる評価の結果と改良の方策について日本産婦人科学会中央専門医委員会に報告します。
専攻医や指導医が専攻医指導施設や専門研修プログラムに大きな問題があると考えた場合、当プログラム管理委員会を介さずに、いつでも直接、下記の連絡先から日本産婦人科学会中央専門医委員会に訴えることができます。この内容には、パワーハラスメントなどの人権問題が含まれます。
電話番号: 03-5524-6900
e-mailアドレス: nissanfu@jsog.or.jp
住所:〒 104-0031 東京都中央区京橋3丁目6-18 東京建物京橋ビル 4階
(問い合わせ先)
住所:〒252-0375 神奈川県相模原市南区北里1-15-1
北里大学病院 臨床研修センター
TEL:042-778-9034
FAX:042-778-9371
E-mail:syokuin@kitasato-u.ac.jp
(当プログラム内容に関する問い合わせ先)
北里大学病院産婦人科
住所:〒252-0375 神奈川県相模原市南区北里1-15-1
TEL:042-778-8414
FAX:042-778-9433
E-mail:obgyn@med.kitasato-u.ac.jp