先輩からのメッセージ

MESSAGE

北里大学大学院 医療系研究科 臨床医科学群 リウマチ膠原病・感染内科学 進藤理沙


 私は2017年に北里大学医学部を卒業し、2年間大学病院での初期研修を経て、2019年より北里大学病院リウマチ膠原病感染内科に入局しました。

 漠然と内科に進むのだろうという気持ちはあったものの、授業で見聞きする免疫学や自己免疫性疾患に対しては、「難しい」と敬遠していた学生でした。研修医として、初めての勤務がリウマチ膠原病科であったことは鮮明に覚えています。病棟業務を覚えることで手一杯でしたが、急性期・慢性期疾患が混在し、多種多様な臓器病変、ステロイドの功罪について初めて触れた2か月でした。また、スペシャリストとしてだけではなく、ジェネラリストとしての側面も重要であることに強い興味を感じました。症例が多岐に渡り、ご指導頂いた先生方や同期生、後輩の存在もあり、4年間の研修期間は日々発見で溢れ、とても充実した内容となりました。一方、臨床で経験した症例の中には、どれほど考えても分類できず、病態生理や介入点がわからない例が存在し、さらなる学びが必要と感じました。2022年より大学院に進学し、臨床一辺倒であった環境から研究への第一歩を踏み出すこととなりました。病院ではクリック一つでオーダーしていた検査項目が様々な手順を経て得られていたことにまず驚き、仮説から実証まで多くの工程や時間を要する基礎実験(まだ始めて間もないですが)そのものにも驚き、ひたすら驚く日々ですが、先生方の温かいご指導の下、楽しく過ごしています。ひとつずつ、丁寧に学びを重ねることを目標にし、腐らず探究できればと考えています。

2021年度 北里大学大学院医療系研究科 博士論文取得
国立病院機構 東京医療センターリウマチ膠原病内科 専攻医 小西美沙子


 私は学生時代、全身を診る膠原病内科に魅力を感じ、専門分野を膠原病内科に決めました。また、リウマチ膠原病の患者さんは診断から長期にわたる治療が必要であり、医療従事者として、受験、就職、妊娠・出産、趣味など患者さんの生活に関わらせていただくことになります。リウマチ膠原病は珍しい病気なので診断に時間がかかることも多いですが、適切な診察や検査で診断・治療することができ、その結果、患者さんが日常生活を取り戻せるようサポートさせていただけるため、大きなやりがいを感じています。
 日々の臨床にやりがいを感じていましたが、臨床の現場では、教科書や論文を読むだけでは解決できない疑問がたくさん出てくるため、悩むことが増えました。これらの疑問を解決し、患者さんに還元したいと思い、研究を始めました。
 また、研究を続けるうちに、科学研究費補助金の若手研究者の対象が「39歳以下の研究者」から「博士号取得後8年未満の研究者」に変更になり、学位の必要性を感じるようになりました。また、私自身が学会で頻繁に発表させていただくようになったことや、学位を取得して臨床と研究に精通されている先輩方を見て、臨床と研究を続けていくには学位の取得が必要なのではと感じるようになったことも、学位取得を目指すようになりました。
 学位取得の過程では、論理的思考、研究の着眼点、学術的な論点・視点などのご指導を受け、大変貴重な経験をさせていただきました。まだまだ私自身に足りない部分が多いことに気づき、反省の日々でした。至らぬ点が多い私に、辛抱強くご指導いただき、心から感謝しています。
 そして今回、「RS3PEと血清反応陰性関節リウマチの臨床的および検査的特徴の比較」のテーマで大学院医療系研究科論文博士で学位(医学科)を取得させていただきました。Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema (RS3PE)は、Remitting(自然に良くなる傾向のある) seronegative(血清反応陰性) symmetrical(対称性) synovitis(滑膜炎) with pitting edema(圧痕性浮腫)の特徴を有し、1985年にMcCartyらによって報告され、血清反応陰性関節リウマチ(SNRA)と類似の臨床特徴を有しています。両者は標準治療薬が異なるにも関わらず、共通する臨床特徴を有していて、鑑別が困難です。これまでRS3PEとSNRAの臨床特徴を比較した研究報告はありませんでした。本研究の目的は、RS3PEとSNRAの臨床的相違点について新たな知見を得ることしました。結果として、RS3PEがSNRAと比較して有意差をもって、小関節腫脹のある患者数が少なく、罹患関節数が少なく、血清CRP値が高く、悪性腫瘍の合併率が高いことがわかりました。その中で一番P値の低かった悪性腫瘍の合併率に関して、悪性腫瘍は生命予後の観点から重要であるため、悪性腫瘍を伴った関節炎の臨床的特徴について、血清反応陰性関節炎の患者を対象に再解析しました。その結果、悪性腫瘍を伴った関節炎はSNRAではなくRS3PEと診断された患者が多いことがわかりました。
 この学位の取得は、私一人の力では不可能であり、ご指導いただいた先生方に大変感謝しております。教えていただいた論理的かつ多角的な考え方や知識を活かし、社会に貢献できるよう、これからも精進していきたいと思います。

2018年4月入局 伊野和馬

 私は学生時代から内科へ進もうとは考えていましたが、リウマチ膠原病・感染内科は進路として全く考えていませんでした。実際、学生時代は教科書に書いてある自己抗体や症状、そして治療はステロイド、免疫抑制剤と記憶してさえいれば困ることはなく、それほど難しいとも感じていませんでした。
 私は北里大学を卒業してそのまま北里大学病院で初期研修を行いましたが、リウマチ膠原病・感染内科は初期研修2年目の4月にローテーションし、様々な疾患を経験しました。例えば全身性エリテマトーデスと言っても症例毎に臨床像は多様性に富み、オーダーメイドで評価、治療を行う必要があります。また治療の主体となる免疫抑制治療が感染症を引き起こし、現病増悪との鑑別が難しいことも少なくありません。一方で膠原病領域の進歩は目覚ましく、特に生物学的製剤については目を見張るものがあります。今後も病態解明とそれに伴う新規治療薬の登場が予想され、未来がある領域と言えます。
 また海外渡航後の発熱等の感染症が疑われる症例、その他にHIV等も扱っており、感染症についての経験・知識が積み上げられるのも強みではないかと思います。
 大学卒業、そしてリウマチ膠原病・感染内科へ入局後、臨床現場で経験するリウマチ膠原病・感染症は想像よりも遥かに難しく、診断・治療に迷うことも多くあります。しかしそれと同時にやりがいも強く感じています。一緒に戦ってくれる仲間もいます。そんなリウマチ膠原病・感染内科で一緒に戦いませんか?

2015年4月入局 村松匠 (2019年4月 大学院入学)

 当科では、大学病院が担う臨床、研究、教育のうち、研究についても力を入れています。現在、当科の研究室では関節リウマチや全身性エリテマトーデスの病態に関わる研究を中心に、日々の研究を行っています。
 私は北里大学病院での初期研修後に当科へ入局しました。後期研修の間は大学病院勤務や市中病院への出向を通して数多くの膠原病リウマチ疾患の診療に携わりました。治療がうまくいったこともあれば、十分な効果が得られなかったり、思いがけない合併症が発症したりと苦い経験もありました。そんな中で、少なからず「なぜ?」と感じることがありました。それらを解決しながら膠原病リウマチ疾患に携わるうえで、臨床の経験だけでは不十分と思い大学院への進学を決めました。
この臨床で抱く「なぜ?」をクリニカルクエスチョンと呼びますが、当科ではこれを大事にしていると思います。解決に必要な考え方やアプローチ方法について一緒に考えて指導してくださる先生方もいます。私は現在、大学院に進学させていただき、膠原病リウマチ疾患に関する基礎研究・臨床研究に携わっています。これらの研究を通して、前述の「なぜ?」を解決できるようにこれからも精進していきたいです。