ACHD
(Adult Congenital Heart Disease)
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講師 小板橋 俊美
ACHDとは
成人先天性心疾患(Adult Congenital Heart Disease)の略で、大人になった先天性心疾患を意味します。近年、循環器内科でも注目されている分野です。
生まれつきの心臓病である先天性心疾患は、成人になっても継続的な経過観察や治療が必要です。今までは主に小児科で診療がなされていました。しかし、多くの方が成人となり、また加齢に伴う成人期特有の疾患を伴うこともあり、小児科だけでは対応が難しくなってきました。人生においては小児期よりも成人期の方が長く、循環器内科で請け負うべき重要な疾患となっています。
「先天性心疾患」と一口に言っても、原疾患とそのタイプ、合併疾患、手術の有無、術式と手術を受けた時代、遺残症・続発症、経年変化により、個々の病態や重症度は多種多様です。小児期から外来通院を継続して内科に移行となった方、通院を中断し突然内科を受診される方もいらっしゃいます。適切な診療には、その多様性と特殊性に対応できる高い専門性が求められます。
小児期に手術を受けて「完治した」、「もう通院しなくていいよ」と言われた方でも、成人期には注意が必要です。今では「根治術」という言葉は使いません。血液の流れや構造異常の修復に成功しても、遺残症や続発症により、術後遠隔期に様々な影響が出てくることが、近年分かってきました。
また、小児期から長年つきあっている病態なので、重症化しても自覚症状として出にくいのもACHDの特徴です。精査をすると予想以上に重症で介入(薬物治療や手術など)が必要となることもあります。今までと‘変わりない’と思っていても、大人になって一度は専門施設で評価を受け、今後の方針を決めることが重要です。
成人先天性心疾患専門医総合修練施設
北里大学病院は、日本成人先天性心疾患学会から成人先天性心疾患専門医総合修練施設に認定されております(施設番号:第015号、認定日:2019年4月1日)。認定後は、転居に伴う転院や小児病院からのご紹介も増えています。
ACHDでは成人期の内科的管理が主体となり、当院では、循環器内科医が中心となって診療致します。しかし、抱える問題は多岐に渡り、関わる専門科や職種は多く、周りの協力なくしては適切なACHD診療は成り立ちません。北里大学病院にはあらゆる診療科が揃っており、施設内で種々の対応が可能です。
各専門分野を持つ循環器内科医が揃うACHDチーム
(ACHD診療、心不全、不整脈、ストラクチャー(カテーテル治療)、画像診断、心エコー図検査、緩和医療、産科関連などにも専門的に対応)
北里大学病院でのACHD診療
成人となった患者様は、自分の先天性心疾患の病名はもちろん、その特徴や受けた手術、現在の病状、今後注意することや起こりうることを理解しておくことが必要です。当科では、まずそこから一緒に確認致します。また、今後の方針は、循環器内科が窓口となり、必要な外科的介入やカテ―テル治療など、該当専門分野の医師や医療スタッフと相談しながら最良の選択を提案できるように致します。さらに重症例では、適応に応じて心移植を見据えた埋め込み型人工心臓(VAD)に対応することも可能です。
そして、仕事や社会参加のサポートも充実しています。通院や入院などで仕事を休まねばならない時や働けなくなった時など、お困りのことがあれば、お早めに医師または看護師にご相談下さい。まずは専門のソーシャルワーカーが対応させて頂きます。

北里大学病院心疾患就労支援チーム
ソーシャルワーカー、循環器内科医、小児科医、産業医、理学療法士(心臓リハビリテーション)、病棟・外来看護師で構成され、個々のお悩みに対応しております。
(本チームは、令和5-6 年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)「先天性心疾患に罹患した成人の社会参加に係る支援体制の充実に資する研究」(研究代表者 小板橋俊美)に取り組んでおります)
最後に
まずは診療・精査をさせていただき評価したうえで、今後のプランを個別に立てていきます。中には症状が無くても治療が必要な方もいらっしゃいます。症状が出た時には手遅れであることもあるので、「先天性心疾患(うまれつきの心臓病)」の診断がついている方は、一度当科の受診をお考え下さい。
2025年3月