血管造影検査・IVR

概要


検査中の風景

血管造影検査は、1から2 mm径程のカテーテルと呼ばれる細い管を目的の血管まで到達させ、造影剤を注入して血管の形態や血流を観察します。画像処理によって、目的の血管だけを描出することで、病気の診断、評価にとても役立ちます。
北里大学病院では、救命救急・災害医療センター、総合手術センターを含め、6台の血管造影装置を稼動し検査、IVRを行っています。
IVR(Interventional Radiology)は、血管造影装置、X線透視装置、CT、MRI、超音波診断装置などの画像診断装置を使い、血管、消化管、尿管などの治療を行うことの総称で、血管造影検査の技術を応用したものを血管系IVRといいます。
血管系IVRでは、カテーテルを目的の場所まで進め、狭窄した血管を広げる拡張術、出血した血管をふさいだり、動脈瘤をつめたりする塞栓術、がんを栄養する血管に薬を注入する動脈化学療法などの治療が行われています。
血管系IVRは、外科手術にくらべて低侵襲で治療を行う事ができるため、体への負担が少なく、入院期間も短くできます。

流れと諸注意

血管造影検査、IVRの流れ

外来、または入院後に担当医より検査、IVRについての説明があります。検査、IVRには多くの場合、入院が必要となります。

1. 病棟での準備

検査、IVR当日は、病棟にて着替え、点滴などの準備を行い、血管造影室へ移動します。

2. 血管造影室での準備

血管造影室移動後は、本人確認のため、氏名、生年月日などをお尋ねし、ネームバンドでも確認いたします。
装置の寝台へ移動後、心電図、血圧計、酸素モニターなどを装着します。

3. 検査、IVR

消毒、麻酔をしたあと、足の付け根や肘などの血管へカテーテルを入れるためのシースといわれる細い管を挿入します。シースを通して目的の場所までカテーテルを到達させ、造影剤を注入して血管の形態や血流を観察します。
IVRを行う際は、必要な道具をカテーテルを通して運び、治療を行います。

4. 検査、IVR後

検査室で、検査に使用したシースを抜いて止血をします。止血後に、体を大きく動かしたり、手足を曲げてしまったりすると、出血する恐れがありますので、安静が必要になります。

 

安全に検査、IVRを受けていただくために

検査、IVRでは造影剤を使用します。検査、IVR前は、4時間前から食事は、摂らないで下さい。普段お飲みなっているお薬の服用は、担当医にご相談下さい。
寝台は、低い位置まで下がりません。車椅子やストレッチャーから、寝台へ移動する際は、スタッフがお手伝いいたしますので、ゆっくりと移動をお願いします。
検査中は、狭い寝台の上に寝て頂きます。また、体のまわりを装置が回転しますので、動かないようにして下さい。


検査室寝台

IVRの実例

頭頸部領域

頭頸部領域では、脳動脈瘤に対する塞栓術、頸動脈狭窄に対する拡張術などが行われています。

頭頸部領域でのIVRの一例 脳動脈瘤に対するコイル塞栓術

脳動脈瘤とは、脳内の動脈がこぶ状にふくらんだものです。脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を引き起こし、生命を左右することもあります。治療には、開頭クリッピング術や血管系IVRであるコイル塞栓術が行われます。
コイル塞栓術とは、カテーテルを通して塞栓物質であるプラチナコイルをつめていく治療法です。これにより、血液が流れ込まなくなり、動脈瘤の破裂を防ぎます。


IVR前

IVR後

胸腹部領域

胸腹部領域では、肝細胞がんに対する抗がん剤を用いた動脈化学塞栓療法、消化管出血に対する塞栓術などが行われています。

胸腹部領域でのIVRの一例 肝細胞がんに対する動脈化学塞栓療法

肝細胞がんとは、肝臓に発症する悪性腫瘍で、肝硬変や肝炎を原因とすることが多い疾患です。肝細胞がんの治療には、外科的切除や局所療法、血管系IVRである動脈化学塞栓療法などがあります。
動脈化学塞栓療法は、腫瘍に栄養を送る動脈に抗がん剤と塞栓物質をカテーテルから流して行う治療法です。
外科的切除とちがい、肝臓の機能を確認しながら繰り返し行うことができます。
コーンビームCTとは、血管造影装置を使って、三次元画像を作成することができ、画像を確認しながら治療を進めることができます。

コーンビームCT画像の白い部分が治療部位です。


IVR前

IVR後

コーンビームCT画像

四肢領域

四肢領域では、閉塞性動脈硬化症に対する下肢血管拡張術や透析時に使われシャント血管の狭窄に対する血管拡張術などが行われています。

四肢領域でのIVRの一例 閉塞性動脈硬化症に対する下肢血管拡張術

閉塞性動脈硬化症とは、下肢に流れる血管が糖尿病、高脂血症などを原因とする動脈硬化によって、足の動脈の血のめぐりが悪くなる病気です。
閉塞性動脈硬化症の治療は、狭窄や閉塞した血管を拡張して、血流を確保することが重要です。
風船のついたバールンカテーテルを用いたり、ステントという網目状の金属でできた管を留置したりして血流を改善します。


IVR前

IVR後

IVR後
(骨盤から足先まで)

心臓領域

心臓カテーテル治療の対象となるのは、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患や不整脈などがあります。
狭心症とは、動脈硬化により心臓を栄養している冠動脈が狭窄し、心筋に十分な血液が送られなくなることにより、一過性の虚血が起こり胸痛や圧迫感等の症状を伴います。

冠動脈に対する冠動脈形成術

冠動脈に対するIVRは冠動脈形成術(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)といいます。
狭窄や閉塞をした冠動脈に対して、カテーテルを用いて治療を行います。肘や手首などの動脈からカテーテルを挿入し、バルーンやステントを用いて治療を行います。また、硬い病変に対しては、医療用のドリルを用いて、血管の内側から病変部を削る治療法もあります。


PCI前

PCI後

不整脈に対する心筋焼灼術(アブレーション)

不整脈の治療は、早い脈拍の不整脈に対して行われます。早い脈拍は、正常な刺激伝導系以外に異常な伝導路が存在し、そこを信号が通り早い興奮が発生します。
治療は、心筋焼灼術(アブレーション)とよばれ、心臓の中に電極カテーテルを通して、高周波を通電して焼灼することで不要な伝導路を遮断し、不整脈の発生を防ぎます。