腎臓病の情報

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腎臓病の情報(患者さま向け)
~ご受診、ご来院の前にお読みになってみてください

腎臓病の概要

腎臓病の概要

腎臓病の概要

腎臓の機能 腎不全の時に起こる異常の例
水の排泄 浮腫(むくみ)、高血圧、肺水腫(胸に水が溜まる)
酸・電解質の排泄 アシドーシス(体に酸が溜まる)、高カリウム血症、高リン血症
老廃物の排泄 尿毒症(気分不快・食欲低下・嘔吐・意識障害)
造血ホルモン産生 貧血
ビタミンD活性化 低カルシウム血症、骨の量、質の低下

腎臓の中を顕微鏡で数十~数百倍に拡大して見ますと特徴的な構造である、糸球体と尿細管が見えてきます。糸球体では水、塩、食事蛋白質の代謝物(いわゆる老廃物)、ミネラル、糖分などあらゆるものをろ過していますが、血液成分や体に必要なタンパク質などはろ過しない仕組みになっています。
糸球体の下には尿細管が続き、ろ過された水、塩などを体調に応じて再度汲み上げたり、尿に排泄したりして体内の水分や塩分量を調整しています。糸球体や尿細管は多くの細胞から成り立っているので、細胞活動がスムーズにいくよう、酸素と栄養を供給するための毛細血管が周囲を取り巻いています。これらの組み合わせをネフロンと呼びますが、ひとつの腎臓に100万本あることが知られていて、両側の腎臓で200万本のネフロンがせっせと尿を作っているわけです。従って、腎臓病、と一口で言っても、糸球体、尿細管、血管のどこがやられているか、によって検査値や症状に差がでてきます。
上の表を見ていただきますと、腎臓は様々な機能を持ち合わせていることがわかります。これらを合わせて「腎機能」というわけですが、一般に医師が病気の説明をする場合は、腎機能というと「糸球体のろ過機能」をさします。
皆さまのお手元の検査値では、糸球体のろ過機能は「血清クレアチニン値」や「eGFR」などと表示されています。ご自身の数値をご確認ください。

糸球体のろ過機能(GFR: Glomerular Filtration Rate)の見方について

糸球体のろ過機能(GFR)は、ある物質が血液の中を流れて腎臓に達し、糸球体でろ過されて尿の中に出てくる場合の血液中濃度と尿中濃度、尿量などを参考に計算します。正確にみるためには、体内で作られて、食事やお薬の影響を受けず、形や量も変わらずに血液の中を流れて糸球体でそのままの形でろ過され、途中の尿細管で吸収されたりせずに尿に出てくる物質でなければなりません。

①血清クレアチニン(Cr)値

糸球体のろ過機能

糸球体のろ過機能

②eGFR(estimated GFR):推算式糸球体ろ過率

血清クレアチニン値、年齢、性別を計算式にいれます。
計算式は「eGFR 糸球体ろ過値」で検索するとでてきます。

糸球体のろ過機能

糸球体のろ過機能

図にあります血清クレアチニンはこの条件を満たした物質なので、大まかなGFRを判断する数値として使用されます。ただし、筋肉で作られるものなので年齢や性別など筋肉量により正常値が異なります。
この影響を除いて、血清クレアチニン値より正確なGFRを評価するために考え出されたのがeGFR(推算式糸球体ろ過値)です。eGFRの計算式はインターネットで「eGFR 糸球体ろ過値」と検索いただくと簡単にみつけることができますので、一度計算してみてください。

グラフにありますように、血清クレアチニン値(縦軸)と糸球体ろ過値(GFR)(横軸)は直線関係ではありません。血清クレアチニン値が「1.0~2.0 mg/dL」ですと大して悪くない、と思われがちですが、実はこのくらいが最もGFRが悪化するのです。早めのご相談、ご受診をお願いいたします。

最終的には糸球体、尿細管、血管のどこがやられても最終的に腎機能の低下がおこります。一般に、蛋白尿、血尿が見られる場合は糸球体の病気ですが、尿細管や血管が病気になっても尿検査で異常がでにくいので注意が必要です。

腎臓病では以下の4点がポイントになります

  1. 糸球体の病気か、尿細管や血管の異常か
  2. 急に発症して週、月の単位で進行するもの(急性)か、ゆっくり年単位で進行(慢性)か
  3. 腎臓が主体に障害されるか(原発性腎炎)、膠原病や糖尿病のように全身疾患に付随してみられるものか(続発性腎炎)
  4. 腎機能低下が見られる場合、進行的に短期間で悪化するのか、また悪くなった腎機能は戻るのか

上記4点のポイントから、「早く腎生検して検査し治療を開始すべきか」、「検査経過をみて判断すべきか」診療方針を決めていきます。
「診療内容」もあわせてご覧ください。どんな病気を扱っているか、どんな症状で注意すべきか、記載しています。

現在、腎臓病関連の中で最も問題になっている項目:慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)

2018年時点、全国で「透析医療を行っている」方は約33万人おり、国民約400人にひとりは透析をしていることになります。加えて、水面下に隠れている、透析に至っていない腎不全の方はじつに1400万人と言われています。単純に計算しますと「国民約10人にひとりは腎臓が悪い」ということになります。
腎不全に至る病気は多彩(腎炎、膠原病、糖尿病、高血圧、遺伝性疾患など)で、それぞれに異なった原因と経過を示しますが、いずれも「ゆっくりと経過し最後には透析療法や腎移植を必要とする」ことから一括して「慢性腎臓病(CKD)」と呼ぶようになりました。
個々の腎疾患毎に特別な治療がある一方で、「慢性腎臓病」としての共通の治療があることが明らかになってきています。

慢性腎疾患(CKD)の定義

  1. 蛋白尿、尿潜血(検査でしかわからない程度)、肉眼的血尿などがある。
  2. 何の症状がなくても、検査として腎臓に病気があることが判明している。
  3. 腎機能が60%以下といわれている(尿検査の異常や高血圧などの他の症状の有無は問わない)
    • ※推算糸球体濾過値(eGFR)<60ml/分

上記のいずれかが3ヶ月以上にわたって見られる場合をCKDといいます。

慢性腎疾患(CKD)の問題点

腎臓はろ過以外に実に色々な働きをしています。腎臓の病気が進行しますとこれらの力が落ちてきますので貧血、むくみ、高血圧など色々な異常がでてきます。
何も治療しないと、透析治療をずっと継続して行うことになってしまいます。更に腎臓の病気があると、心臓血管病(狭心症、心筋梗塞)になる確率が大きくなります。腎臓の機能が悪い、また尿蛋白が多いほどより確立は大きくなってしまいます。腎臓病の進行を抑えることは、心臓血管病を予防することに直結します。

CKDの検査:大元の原因の病気を調べるために「腎生検」を行うことがあります

腎生検につきましては、以下のページをご参照ください。

腎生検について

慢性腎疾患(CKD)の一般的治療

  1. 原疾患の治療
    先ずは腎臓を傷める大元の病気(腎炎、高血圧、糖尿病など)をしっかり治していただくことが大切です。
  2. 対症療法
    原疾患が何であってもCKDにはある程度共通の病状があるので、対症的な治療をしっかり行うだけでも進行度はかなり差が出ます。
    • 塩分摂取を減らす:塩分6g(高血圧の人、腎機能30%以下の人)
    • 禁煙
    • 肥満の解消:カロリー制限、歩行、運動など
    • 血圧の管理:目標血圧(家庭血圧)125~130/75~80mmHg未満(※特に糖尿病の方)
    • 食事の蛋白質の量の調整:その方の栄養状態に応じて調節します
    • 十分な飲水(1日、1000~1500mlくらいは飲みましょう)
腎機能(目安) 症状 検査所見 必要な処置
90%以上 ほとんど無し 蛋白尿・血尿・高血圧 定期的検査
60%~90% ほとんど無し 蛋白尿・血尿・高血圧 一度は腎臓専門医受診
30%~60% むくみ 上記+クレアチニン上昇 腎専門医によるフォロー
腎不全進行抑制の治療
15%~30% 上記+易疲労感 上記+貧血・カルシウム低下 透析・移植の知識取得
腎不全合併症の治療
15%未満(末期腎不全) 上記+吐気・食欲低下
息切れ
上記+カリウム/リン上昇
アシドーシス・心不全
透析・移植の準備
10%以下の腎機能では透析開始・移植施行

腎機能低下に応じて検査値異常がでます

糸球体のろ過機能

ろ過機能が10%以下になると腎代替療法が必要です。

糸球体のろ過機能

糸球体のろ過機能

腎代替療法には透析・移植の選択があります。

腎臓病が悪化し糸球体濾過値が少しずつ落ちてきますと、その程度に応じて検査値異常や症状がでてきます。正常の5~10%以下になると自分の腎臓だけでは体内環境を維持できなくなり、透析療法ないしは腎移植が必要となります。透析療法は、血液透析療法と腹膜透析療法がありますが、それぞれに特徴があります。

血液透析(HD)、腹膜透析(PD)及び腎移植にはそれぞれに特徴があります

糸球体のろ過機能

血液透析 腹膜透析 腎移植
旅行・出張 制限あり(通院透析施設の確保) 制限あり(透析液・装置の準備) 自由
スポーツ 自由 腹圧がかからないように 移植部保護以外自由
妊娠・出産 困難を伴う 困難を伴う 腎機能良好なら可能
感染の注意 必要 やや必要 重要
入浴 透析後はシャワーが望ましい 腹膜力テーテルの保護必要 問題ない
その他のメリット 医学的ケアが常に提供される、最も日本で実績のある治療方法 血液透析にくらべて自由度が高い 透析による束縛からの精神的・肉体的解放
その他のデメリット バスキュラーアクセスの問題(閉塞・感染・出血・穿刺痛・ブラッドアクセス作成困難)
除水による血圧低下
腹部症状(腹が張る等)
カテーテル感染・異常
腹膜炎の可能性
蛋白の透析液への喪失
腹膜の透析膜としての寿命がある(10年位)
免疫抑制薬の服作用
拒絶反応などによる腎機能障害・透析再導入の可能性
移植腎喪失への不安

血液透析療法

前腕に人工的に動脈と静脈の吻合(内シャントと呼びます)を局所麻酔の手術で作ります。この内シャントに透析用の針を穿して体外循環を行います。体外に出た血液が血液浄化器(ダイアライザ)の中を通過する間に血中の老廃物が除去されます。これを血液透析と呼びます。
1回4時間、週に3回(月、水、金ないしは火、木、土)、これを行うのが標準的治療です。慢性腎炎による腎不全で合併症の無い人は、この治療により35年以上にわたって日常生活を営めます。

腹膜透析療法

現在はCAPD療法という方法で行なっています。腎機能が10%以下になったら、CAPD用のカテーテルをお腹に植え込みます。カテーテルの一方の端を腹腔内に開放し、反対側を皮下に留めておきます。しばらく放置しておき、腎機能が5%に近づいたところで、カテーテルの皮下側を皮膚の上に出してCAPD療法を開始します。2ℓの腹膜液を腹腔(ふくくう)に入れてそのまま6時間放置し、老廃物が腹膜液中にしみ出すのを待ちます。6時間後に、2ℓの腹膜液を入れ替えます。
CAPD療法は1日4回(早朝、昼、夕、就寝前)、自分で腹膜液の交換をして、在宅(勤務先)で治療を行ないます。医師の指示のもと、自分で行う治療ですので自分の生活パターンが維持できますが、全て自分で行うために負担を感じる場合があります。

※CAPD療法の注意点

  1. 常に清潔な操作でCAPDを行なう必要がある。
  2. 腹膜が劣化するために5年を目安に終了する必要がある。
  3. 腹膜液が濁ったら(腹膜炎)、すぐに治療を開始する必要がある。

腹膜透析療法には、上記の標準療法以外にも多彩な方法がありますが、腹膜の機能を評価して、これを参考に治療法が決定されます。

腎移植(ここには簡単な情報のみ掲載いたします。詳細は医師にお尋ねください)

  1. 移植では臓器を提供いただく方をドナー、臓器を受け取る法をレシピエントと言います。献腎移植(亡くなられた方が腎臓を提供する場合)と生体腎移植があります。
  2. 移植には拒絶反応を抑えるために免疫抑制薬を半永久的に服用する必要があります。しかし、お薬を複数、少量ずつ使用することで効果を最大に、副作用は少なくする投与法が標準になっています。また、腎臓病治療の進歩も加わり、献腎、生体腎移植共にその長期生着率は格段に向上しています(10年生着率は80%を超えています)。またドナーとレシピエントの血液型の違いがあっても同等の生着率です。
  3. 腎移植は透析療法を開始した後である必要はありません。現在、透析療法開始前に移植を行うケースが増えてきていますし、当院でも推進しています。
  4. 献腎移植では、透析療法開始時に希望を日本臓器移植ネットワークに登録します。献腎があった場合には、決められたルールでレシピエントが選ばれ、腎移植が行なわれますが、その時は突然にやってきますので普段の体調管理が大切です。
  5. 生体腎移植は、家族からの腎臓の提供により行なわれますが、血縁のある家族は6親等、結婚による血縁のない家族は3親等までの人が腎臓の提供者になれます。ドナーとレシピエントの検査を事前に十分行ないます。

泌尿器科腎移植専門外来では泌尿器科、腎臓内科が一緒に診療を行っています。どうぞお気軽にご相談ください。