腎生検について

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腎生検の目的

腎臓病は血液や尿検査だけで確定診断できる病気はほとんどないのが実情です。
腎生検は「腎臓に何が起こっているのか?」正確な組織診断をつけることを目的とします。その結果を元に、今後の病状の見通しと最もふさわしい治療方針を考えます。

腎生検が必要になるのは主に以下のような場合です

  1. 血尿が持続し、進行する腎炎が疑われるとき
  2. 1日0.3~0.5g以上の蛋白尿があるとき(正常は0.3g未満)
    • 腎臓病は初期に診断することも大切です
  3. 大量の蛋白尿がみられるとき(ネフローゼ症候群など)
  4. 急性腎不全(週の単位で腎臓のろ過機能が悪化する状態)のとき
    • 急性腎不全に加え、血尿が加わる症状を「急速進行性腎炎腎炎症候群」と呼びます。全身性の疾患でおこることも多く、迅速な診断治療が必要になることが多いです
  5. 血尿も蛋白尿もない、原因不明の腎不全の原因診断を行うとき
  6. 「移植腎」での原因診断のため

腎生検ができない場合

  1. 超音波検査で腎臓が萎縮している。あるいは大きさに左右差がある。
  2. 出血しやすい状態が改善できない。
  3. 腎臓そのもの、周りに感染がある。
  4. 多発性のう胞腎を代表として腎臓の形態の異常がある。
  5. 検査中の指示、検査後の安静が守れない。
  6. ご本人がご希望されない、ご承諾が得られない。

腎生検の手順

検査前:

  1. 腎臓の超音波検査で腎臓の萎縮、左右差や形態異常がないかを確認します
  2. 出血に備え、抗凝固薬(いわゆる「血液をさらさらにする薬」)を中止します。
    膠原病や血管炎などでは一般の腎疾患に比較して出血しやすい傾向もあります。
    • こちらは重要な点であり、当院では「程度は異なるが出血を生じる検査」として事前に注意事項をご説明しています。

検査方法:
腎生検には以下の2つの方法があります。

  1. 病室や病棟で行うもの(超音波ガイド下針腎生検)
  2. 手術室で全身麻酔を行って実施するもの(開放性腎生検)

上記のうち当院では、超音波ガイド下針腎生検を行っています。

検査手順:

  1. 検査をお受けいただく方はうつぶせになっていただきます。
  2. 超音波を腎臓の形態を観察し、針を刺す場所を複数名の医師で決定します。
  3. 皮膚に麻酔注射をした後に、背中から細い針を入れて、少しずつ進めます。
  4. 針が腎臓に達したところで麻酔注射を腎臓の表面に加えます。
    ここで再度、複数の医師が針を刺す場所を確認します。
  5. 医師から「ではこれから針を刺しますので呼吸をしっかり止めてください」とお声がけします。
  6. 数秒ですが針が腎臓に入り、腎臓の一部を頂くことになります。
    この操作を2回行います。いただく腎臓は鉛筆の芯ほどの太さで、長さは1~2cmくらいです。
  7. 検査終了後、うつぶせのままで10分間くらい圧迫して出血を止めます。
  8. 止血後、仰向けになり一日程度ベッド上安静が必要となります。
  9. その後も2~3日は病室で安静を保ち、出血の有無を超音波で確認します。

腎生検 Q&A

Q1.腎生検は難しい検査ですか?

A1.超音波ガイド下針腎生検は、一定期間の訓練が必要な検査ですが、超音波で腎臓の位置を確認しながら、複数の医師で行います。ただし、肥満体形の方などでは腎臓の位置が確認しにくいことがあります。条件が整わず採取出来なかった場合、あるいは採取はできたが、必要な腎臓の構造物が含まれていない場合もございます。このような場合はご説明したうえで、再度検査の予定を立てることもあります。臨床症状や検査所見、患者さんの意向を踏まえて、検査を行うか、中止するか、判断することになります。

Q2.腎生検の主な合併症や危険性を教えてください

A2.日本全国で1年間に約1万人の方が腎生検を受けております。軽い出血等の合併症が、100人あたり2~3人程度、すなわち98人の方は特に問題なく終了しています。輸血や外科的処置を必要とする方は1,000人に2人程度で、998人の方では大きな処置を行うことなく出血は止まります。 この3年間で不幸にして亡くなられた方も2人おりますので1.5万回程度の腎生検でお一人亡くなられるか、どうかという危険度です。お亡くなりになる方は比較的出血しやすいご病気をお持ちの方に多いようです。その他、疼痛や麻酔薬のアレルギー、針を刺した場所の感染、動静脈瘻(腎臓のなかにある動脈と静脈がつながってしまうこと)等を合併することがあります。(平成10~12年における日本腎臓学会がまとめた統計による)

Q3.合併症が起こったときはどのように対応しますか?

A3.

  1. 検査中の痛みが強い場合は、麻酔薬で対応いたします。
  2. 出血が続く場合は安静時間を延長します。出血により血圧が下がることもあり、輸血を行うこともあります。また、腎臓の動脈に管を入れ、内側から出血を止める操作を行うこともあります(塞栓術)。更に出血が持続するときは外科医による手術が必要になってきます。
  3. その他の稀な合併症に対しても、原則的にまずは内科的な治療を試み、必要なときは外科的な処置を行います。

Q4.腎生検後の注意事項や検査後の退院の時期、退院後の生活は?

A4.

  1. 腎臓は血液の流れる量が多い臓器ですので針を刺した後は必ず出血があります。
    圧迫して出血を止めますが、その後の安静が大切です。また、腹圧をかける動作が出血のリスクを増やしますので可能な限り避けていただくようにご説明しています。
  2. 検査終了後、ほぼ24時間は仰向けの姿勢で安静を守っていただいています。食事は食べやすい内容に替え、排泄等はその都度ご様子をみて対応いたします。その後、3日間程度経過を観察して出血等、なければ退院です。
  3. 検査後、出血があった場合は出血が止まったことを確認するまで安静のため入院は延長となります。
  4. 退院後は通常の生活にお戻りいただけますが、激しい運動は、2週間から3週間は避けてください。またお仕事の内容によりご注意が必要なこともありますので、ご退院の際に担当医から説明いたします。
  5. 退院後、血尿や刺した側の痛み、発熱等がある場合には、ご連絡をいただいています。

腎生検には、診断を確定し最も適切な治療を選択する、という大切な点がありますが、一方で出血等の合併症もあります。検査が必要と思われた場合にはこの条件をよく考え、「検査が必要か?」「しない場合の不利益はどの程度のものか?」などご相談しながら決定してまいります。
ご不明な点やご質問がありましたら、遠慮なくご相談ください。