患者様へ

このたびは手術をお受けになることが決まり、手術のときの麻酔のことも気になることと思います。 北里大学病院では、専門の麻酔科医があなたの手術の麻酔を担当いたしますのでご安心ください。 この「しおり」は、麻酔や手術室のことを少しでもご理解いただけるように作成されたものです。 ぜひともご一読いただき、安心して手術に臨んでいただきたいと思います。

麻酔とはどんなものか?

安全な麻酔のために

近年、手術、麻酔は非常に安全になりました。とはいえ、麻酔が原因となって死亡や高度障害をひきおこすことが全くないとは言えません。現在、このようなことは約1万回の麻酔に1回あるといわれています。患者さんの術前状態がよくない場合や難しい手術などでは、死亡や高度障害に至らなくても、予想もできないような血圧の低下、呼吸状態の悪化などが見られることがあります。

私たち麻酔科医と手術部看護婦は手術を行っている間、患者さんのそばから離れることはありません。そして、患者さんの状態を観察し、適切な処置を行い、安全に手術が行われるよう努力しています。

麻酔法の種類

麻酔の方法は、意識がなくなるかどうかで全身麻酔と局所麻酔の2つに大別されます。

全身麻酔には、麻酔ガスを使う吸入麻酔と注射薬を使う静脈麻酔があります。

局所麻酔法には、脊髄の近くや神経の集まっているところで痛みを止める方法(脊髄麻酔、硬膜外麻酔、神経そうブロックなど)と、手術するところで痛みを止める方法(局所浸潤麻酔)とがあります。一般に、背中からの麻酔の注射が脊髄麻酔や硬膜外麻酔で、歯医者さんで歯を抜くときの麻酔が局所浸潤麻酔です。局所麻酔のみでは意識はなくなりませんが、眠くなる薬を使えば手術中は意識がなくなります。

あなたの手術の麻酔方法は、私たちが最もよいと思う方法を薦めます。手術の内容や患者さんの状態により全身麻酔と局所麻酔を組み合わせることもあります。麻酔方法について何か希望がございましたら遠慮なく申し出てください。

気管挿管について

気管挿管とは口あるいは鼻から気管の中に、直径1cm程度の管(気管チューブ)を通して酸素や麻酔ガスの通り道を開いておく方法です。これは全身麻酔をかけるときに必要となります。

では、気管挿管はどのように行われるのでしょうか? 全身麻酔薬で患者さんが眠られた後、のどの奥を見る器具(喉頭鏡)を使って気管へチューブを入れます。この操作は全身麻酔にかかった状態で行いますので、苦しさや痛みは感じません。気管挿管に伴い、以下のようなことがおこることがあります。

歯の損傷

まれなことですが、喉頭鏡でのどの奥を見るときに、歯が折れたり欠けたりすることがあります。特に、前歯がぐらぐらしているとおこりやすくなります。私たちは歯の損傷をおこさないように細心の注意を払いますが、まれにはこのようなことがおこる事をご理解ください。なお、歯の損傷をどうしても避けたい時や、歯の治療目的に手術される場合には、なるべく患者さんの意向に沿うよう、違う方法で気管挿管することができます。ただし、多少痛みを伴ったり、せき込んだりするという欠点もあります。

のどの痛み、声のかすれ

気管に管をいれたため、風邪をひいたときのようにのどが痛くなったり、声がかすれることがあります。この症状はほとんどの場合、4~5日でよくなります。