組織移植

骨・靱帯組織の移植

 骨・靱帯は全身の形を整えているばかりでなく、関節の運動や体重を支える運動器官の一部として重要な組織です。そのため、骨組織は自ら修復していく能力を持っています。
 しかし、広い範囲で骨を失ってしまうと日常生活を送るために欠かせない 運動機能を回復することができません.現在、骨・靱帯欠損の修復法には、自家組織の移植、人工材料による補填、同種骨・靱帯組織の移植があります。

●自家組織の移植
 自家組織はもっとも優れた効果を発揮する移植用材料です。しかし病巣から離れた正常部位から採取しなければなりません。そのため、採取部の感染、骨折および採取される組織によって各々特有の機能障害を来す危険性があり、採取できる量も限られています。

●人工材料による補填
 人工材料は、置換した部分と良好な親和性を示しますが、移植した部位に半永久的に残ることがあります。生体組織とは違った物質が体内に存在するため、正常組織と人工物との間でひずみが生ずる可能性があります。

●同種骨・靱帯組織の移植
 同種骨・靱帯組織による欠損部の修復は、標準的な治療法として世界中で広く行われていますが、我が国ではまだ一般的ではありません。
 同種骨・靱帯組織は凍結保存することによって、およそ5年間の保存および臨床使用が可能です。このような組織は免疫抗原性が極めて低いため、拒絶されることはほとんどありません。また移植された同種骨・靱帯組織は次第に吸収・置換され、患者さん自身の組織に置き換わっていきます。よって、同種骨・靱帯組織を移植した部位は時間とともになじみ、元の状態に回復することが期待されます。
 当院では、同種骨・靱帯組織を採取・処理・保存するバンク(北里大学病院骨バンク)を有しております。より良い整形外科治療のため、亡くなられた方およびご遺族の崇高なご意思のもと提供された良質で安全性の高い同種骨・靱帯組織を取り扱っています。

●同種骨・靱帯組織移植の必要性
 同種骨・靱帯組織移植を必要としている患者さんは、骨腫瘍、先天性疾患あるいは外傷による骨・関節の欠損、脊椎や関節の変形性あるいはリウマチ性疾患など、北里大学病院だけでも年間50名を越えています。
 大きな欠損部の再建には、同種骨・靱帯組織の移植がもっとも有用な治療手段です。手足を失ってしまう重いけがや病気でも、同種骨・靱帯組織移植によって生活を営む基本的な機能を回復することができます。

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