もう一つの麻酔科医の活動の場としての分娩室。
麻酔科医の存在意義はまだ一般の人に十分知られているとは思いませんが、それでも手術の際に麻酔を行う外科医とは別の医者がいることが段々に浸透してきていることと思います。病院によっては人出が少なくて麻酔科医は手術室だけに隠っている場合もあるでしょうが、実は多くの病院では手術室を出たところでも麻酔科医は活躍しています。
ここ北里大学病院ではなんと分娩室にまで麻酔科医が進出しています。北里大学病院産婦人科では創立以来、いわゆる「無痛分娩」を30,000例以上も手掛けているので、今さら麻酔科医が何故わざわざ分娩室なんかにと思う人もいるかもしれません。
しかし、現在の医療界は大きく二つの方向性に特殊化してきています。すなわち、総合診療部や女性外来、漢方外来など今までの専門化し過ぎた部門を総合的に扱う科の出現と、それとは対極的に高度医療を行うための専門化部門です。
そこで、無痛分娩には麻酔薬を使うことが一般的である以上、麻酔薬に造詣が深い麻酔科医が周産期麻酔科医としての専門性を生かしても何ら不思議はありません。
高齢出産や合併症をもつ妊婦の周産期管理には時として麻酔科医の持つ呼吸循環管理の知識が役立つこともあります。 北里大学病院では産科、麻酔科のみならず小児科の新生児部門、小児外科の先生方と常に良好なコミュニケーションをとり、また必要に応じて内科、精神科の先生方にも協力を得て周産期医療を実践している全国でも稀な施設といえると思います。
産科麻酔の中でも特に誤解の多い無痛分娩を理解していただくために平成17年に「麻酔分娩がよ~く分かる本」をメディカ出版から上梓しました。