臨床検査部
Clinical Laboratory Center

現代の医療において、臨床検査は病気の診断、治療方針・効果、予後の判断に必要不可欠となっています。臨床検査部では、「正確・精密な検査結果を迅速に依頼医に報告し、信頼性の高い検査結果を提供することで診療に積極的に貢献する」ことを目標に掲げ、日々進歩する医療に対応できるよう努めております。
また、2017年12月には臨床検査の国際認証であるISO 15189認証を取得致しました。よって、臨床検査部では国際レベルの技術水準と検査精度により品質保証された臨床検査データを提供することで、高度な診療・患者サービスを実施しております。今後もISO 15189の品質マネジメントシステムを活用することで、更なる信頼性の向上を目指してまいります。

臨床検査部のご紹介

臨床検査部では、外来患者さんの採血業務を集約化させた中央採血室を設置し、1日約800~1,200名の患者さんの採血を行っています。小児科の患者さんも15歳以上を対象として中央採血室にて採血を行っています。
検体検査は血液検査、免疫化学検査、一般検査、微生物検査、遺伝子・染色体検査に分かれて検査を実施しておりますが、検体検査室は中央採血室と隣接して集約化することで、効率よく迅速的に検体検査の結果を提供しています。さらに、検体検査の多くの項目において日当直体制により365日・24時間体制で迅速検査・報告体制を実施しております。また、新生児やお子様のために、血液や尿などの検体を微量な採取量で検査を行えるように工夫しています。
生理検査室では循環機能検査、超音波検査、呼吸機能検査などの迅速生理検査、脳神経機能検査、聴覚平衡機能検査などの精密生理検査に分かれて検査を実施しています。なお、急性期や重症度の高い患者さんには、医療安全の観点から、新生児集中治療室(NICU)、小児集中治療室(PICU)、母体・胎児集中治療室(MFICU)などの病棟への出張検査を行っています。さらに、生理検査室内では人気キャラクターの切り絵や玩具や人形など用意してお子様の不安を取り除くように工夫しています。睡眠による検査が必要なお子様のためには眠りやすくするため小児睡眠室を設置している他、脳波検査によって頭皮に付着したペーストを洗い流せるように洗髪室を設置して患者サービスの向上に努めております。
また、チーム医療の一員としてICT(感染対策チーム)、NST(栄養サポートチーム)、糖尿病療養指導、腎臓病教室などに参加し、診療支援業務を積極的に行っています
このように臨床検査部では、周産母子成育医療センターの対象となるお母さんからお子様までの患者様に対して、安全・安心かつ正確・精密な検査を幅広く実施しております。

スタッフ数

臨床検査診断医:2名
臨床検査技師:90名
事務員:8名

主に取り扱っている医療機器

臨床検査部では検体検査および生検検査で多種多様な検査機器を使用していますが、周産母子の患者さんと接する検査機器の一部を紹介します。

  1. 小児心電図検査の使用機器
    Cardio Star FCP-7541(フクダ電子)、CardiofaxG ECG-2550(日本光電工業)
  2. 小児脳波検査の使用機器
    脳波計Neurofax EEG-1200、EEG-1214、EEG-1218(日本光電工業)
  3. 新生児聴覚スクリーニング検査(OAE検査・AABR検査)の使用機器
    エコースクリーンⅡMAAS (日本光電工業)
  4. 小児心臓超音波検査の使用機器
    超音波画像診断装置(心臓専用機器)ACUSON SC2000(SIEMENS)
  5. 産科超音波検査およびDVTエコー検査の使用機器
    超音波画像診断装置(腹部汎用機器)Aplio-400、Aplio-500、Aplio-i800(キャノン)、Ascendus(HITACHI)
  6. 小児睡眠時無呼吸症候群検査の使用機器
    パルスリープLS-100(フクダ電子)

検査の実施内容

臨床検査部では周産母子の患者さんに様々な検査を実施しています。代表的な検査項目について紹介します。

1)小児心電図検査

標準12誘導心電図検査は手足や胸に電極シールをはり、心臓が出す電気を機械で取り出して、心臓の働きを調べる検査です。静かに落ち着いているところを10~20秒記録します。じっと横になるのが難しいお子様や小さなお子様には、おもちゃなどで気を引いたりながら検査することもあります。大人の心電図とは異なり、小さな電極を使用するなど、小さなお子様でも不安にならずに検査が受けられるような工夫をしています。
この他にも、胸に電極を装着し、医師立会いのもとランニングマシンで運動しながら心電図検査を行う運動負荷試験(トレッドミル検査)や胸に電極を装着し、そのまま丸一日過ごして心電図の波形を記録するホルター心電図(長時間心電図)なども行っています。

2)小児脳波検査

小児における脳波検査の目的には、てんかん、脳炎、脳血管障害などの疾患やその経過観察に加え脳機能の発達を他覚的に評価します。検査は年齢により12~21個個程度の電極を頭全体に装着し、脳(大脳)が活動すると発生する微弱な電気活動を波形として記録します。異常がある場合は特徴的な波形や、リズムの乱れとして記録されます。安静時の脳波だけでなく、光や音の刺激を加え、刺激に対する脳波の変化や異常な反応が無いかを確認します。睡眠中は脳の活動が変化するため睡眠時の脳波も重要となります。そのため、安静状態を保ち、睡眠脳波を記録するために小さなお子さんには、睡眠導入剤を使用することがあります。脳波検査は痛みや電気が流れる事も無いので、安心して繰り返し検査を受ける事ができます。検査時間は30~60分です。

3)新生児聴覚スクリーニング検査

先天性難聴の出現頻度は1000人に1~2人とされています。難聴を早く発見して、聞く力や話す力をつける練習を早期に実施できると、それだけコミュニケーション能力を高くすることができます。この検査は、より詳しい聞こえの検査を受けた方が良いかを選別するための簡易検査で、お子様が寝ている間に5~10分ほどで終了します。検査の準備として耳栓を入れたり、電極シールを貼ったりしますが痛みのある検査ではありません。

  1. 1.OAE検査(誘発耳音響放射)
    新生児の耳に小さなプローブ状のスピーカーで小さな音を聞かせます。この音が耳の奥にある器官の蝸牛に達すると、その特徴的な構造によって増強され、反射音として耳の外へ放出されます。この増強された音をプローブ内のマイクで検出することで内耳蝸牛の状態を推測します。

  2. 2.AABR検査(自動聴性脳幹反応)
    OAE検査で反応が検出されなかった場合は、音刺激に対する脳波の反応を検査します。新生児のおでこ、うなじ、肩の3カ所に電極を装着し、耳からヘッドホン状のスピーカーで小さな音を聞かせながら脳波を測定します。音が聞こえている場合に出現する特徴的な脳波波形を機器が自動で検出して検査結果を評価します。

4)小児心臓超音波検査

小児の心臓超音波検査は、生まれつきの心臓病(先天性心疾患)、小児期に発症する後天性心疾患(川崎病の冠動脈瘤、心筋症、肺高血圧、不整脈)に対して、心臓内部の形態診断を行うことができます。心臓の壁の欠損部位や小さな欠損孔を見つけることもできます。
検査時間は15~30分です。検査中は安静を保つことが必要で、安静が保てない場合、3ヶ月~3歳以下のお子さんは、眠った状態で検査するため、睡眠導入剤を使用します。検査当日のお昼寝は避けて、予約時間近くに眠ることが出来るようにご配慮をお願いします。また、検査の途中で起きてしまった時の為に、ミルクやおしゃぶり等をご持参ください。胸にゼリーを塗ってプローブをあてて検査をしますが、首回りからあてることもありますので、前開きの洋服でご来室下さい。検査着の貸出しも行っています

5)産科超音波検査(胎児スクリーニングエコー検査)

一般的なスクリーニングの産科超音波検査では、胎児を検査する時期は妊娠初期、中期、後期の間に3~4回程あります。臨床検査部での検査は中期以降の妊婦さんを対象にお腹の上から胎児のスクリーニングエコーを行います。胎児スクリーニングエコー検査では、胎児の向き(頭が下なのか、逆子かどうか)、性別、心拍、心臓の形態、胎児の大きさ(推定体重)、大きな胎児異常がないかなどの検査を行い、その他に、胎盤の位置や羊水を見て、胎児が元気かどうかを観察します。胎児スクリーニングエコー検査によって何らかの異常が偶然見つかった場合には産科医師による精密検査を行います。臨床検査部での検査では、妊婦さんや胎児の状態などを考慮した上で、安心して検査を受けていただくために妊婦さんや御同伴のご家族の方に胎児の様子を胎児の超音波像の簡単な説明なども行っております。

6)下肢静脈エコー検査(妊婦DVTエコー検査)

深部静脈血栓症(DVT;deep vein thrombus)は、エコノミークラス症候群ともいわれ、窮屈な座席で長時間の同じ姿勢でいることにより足の血の流れが悪くなり深部の静脈内に血の塊(血栓)ができるものです。この血栓が剥がれて肺の血管につまると、胸が痛い、呼吸が苦しいなどの症状がでて肺塞栓症(PE)をおこします。DVTは妊婦さんや産後に高い頻度で発生することが知られています。そのため、DVTを早期に発見し、適切に治療することが重要で、下肢静脈エコー検査はDVT診断に役立ちます。検査の際はプローブにゼリーを付けて足の付け根からふくらはぎ付近まで検査を行い、静脈内の血栓の有無やドプラによる血流の有無を確認します。簡単で侵襲性がなく検査時間も短い(約10分~15分程度)検査です。

7)簡易終夜睡眠検査(睡眠時無呼吸症候群検査)

小児の睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleep apnea syndrom)では、いびきや夜尿、寝汗、日中傾眠等だけではなく、成長障害・摂食障害などを引き起こすとされています。
SASを引き起こす原因の多くはアデノイド増殖症や口蓋扁桃肥大であり、通常はアデノイド切除や口蓋扁桃摘出により改善します。ただ高度な扁桃肥大が認められても無呼吸を起こしているとは限らないため、終夜睡眠検査で診断されます。成人では一泊入院する検査ですが、小児では困難であると考えられるため、検査機器を貸し出す簡易終夜睡眠検査を行っています。小児では成人のように多くのセンサー(脳波・心電図・呼吸運動他)は取り付けず、経皮的酸素飽和度SpO2のみを装着し、その値の変動から呼吸障害の有無を判断していきます。小児の体型によっても装着方法が異なるため、検査日(検査機器受け取り日)には患者さん本人も一緒に来院していただくことをお願いしています。返却日に記録状態を確認し、必要な場合は再検査をお勧めします。記録されたデータを解析しているため、結果報告は次回診察日となります。

8)染色体検査

染色体検査は検査の目的(適応)によって出生前診断と先天異常に関する検査に分けられます。
出生前診断では、母体の腹部に針を刺して、子宮内の羊水中に含まれる胎児の細胞を採取し、胎児の染色体の変化を調べる検査です。羊水検査は確定的検査であるため、胎児の染色体の変化の診断を確定することができます。実際の羊水採取は妊娠15~17週に行われ、羊水中の胎児細胞を約2週間培養し、その後、特殊な処理を行い顕微鏡下で染色体の数や構造を調べます。出生前診断としての羊水検査の適応は、次の1.~4.の理由があった場合、両親の申し込みがあれば行うことがあります。

  1. 夫婦のいずれかが染色体異常の保因者である
  2. 高齢妊娠
  3. 染色体異常症に罹患した児を妊娠、分娩した既往を有する
  4. 他の検査で染色体異常児妊娠の可能性が高い

先天異常に関する染色体検査では、新生児から血液を採取し検査を行います。染色体異常が疑われる新生児の診断のために行われますので、両親への十分な説明がなされ同意を得たうえで、染色体検査を行うことになります。

9)微生物検査(GBS検査)

B群溶血性レンサ球菌(group B Streptococcus;GBS)は膣や腸管などに存在し、一般的に健常人のおよそ10~30%の人が保有する細菌です。妊婦さんの膣内にGBSを保有している場合、ごく稀に(1%程度)分娩時に膣を通って出てくるとき、赤ちゃんに感染する場合があります。感染した場合、敗血症や髄膜炎など重篤な感染症となり、約20%の赤ちゃんが死亡あるいは重い後遺症が残ることがあります。
GBSは、その細菌の表面の多糖体抗原によって、現在の10種類に血清型に分類されています。新生児GBS感染症において、血清型III型は高い頻度で分離され、かつ敗血症や髄膜炎を発症する強い病原性を持つことが知られています。
当院では、妊娠35~37週の妊婦さんに、GBSスクリーニング検査としてGBS専用の選択培地を用いて膣や頸管内容にGBSを保有しているか否の検査を実施しております。また検査でGBSが認められた場合は、その血清型を調べて血清型の報告を行っております。

10)風疹抗体検査

先天性風疹感染症とは妊婦が風疹ウイルスに感染し、その胎児が風疹ウイルスに感染した結果起こるすべての事象を指し症候の有無は問いません。先天性風疹症候群は、先天性風疹感染症の結果、眼、耳、心臓などに特有の障害をきたした疾患です。風疹ウイルスの胎内感染を証明するために次の①~③の検査を行います。①「血清風疹IgM抗体検査(生後半年は検出可能)」、咽頭拭い液、唾液、尿を用いた②「ウイルス分離同定検査・風疹ウイルスPCR検査」、③「血清風疹HI抗体価の経過観察」があります。当院では、迅速性、感度・特異性が高い血清風疹IgM抗体検査を受けることができます。

その他の検査に関しては、北里大学病院臨床検査部ウェブサイトをご覧ください。

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