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泌尿器科の代表的な疾患


前立腺がん

前立腺がんとは


前立腺は下図のように膀胱の下方にある臓器で、前立腺液という精液の一部を分泌しており、前立腺はその発生から増殖・成長まで男性ホルモンに依存しています。

図1

症状


早期癌においては多くの場合、無症状です。前立腺癌が膀胱や尿道へ浸潤すると血尿が出現したり、骨に転移すると痛みを生じます。

診断


はじめに直腸診(前立腺の触診)と血液検査である前立腺癌マーカー(PSA)の測定を行います。 そこで前立腺癌が疑われる場合は、超音波を用いて直腸または会陰部より針を挿入して 前立腺から組織を採取して組織診断を行います(前立腺生検)。

組織検査により前立腺癌と診断された場合には、癌がどの程度広がっているかを MRIや骨シンチなどで検査いたします(臨床病期診断)。

治療法


治療法は年齢や臨床病期、PSA値、病理検査の結果(Gleason score)などを考慮して決定いたします。


1. 手術

a)開腹根治的前立腺全摘除術

b)腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術

図2

癌が前立腺に限局している場合に手術の適応となり、年齢や既往歴などを考慮の上、上記の如く開腹または腹腔下鏡根治的前立腺全摘除術を行います。

腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術に関しては、2000年より当院で開始しており、これまで290例以上施行しております。 内視鏡を用いることで良い視野が確保されるため、輸血率も5例(1.7%)とその安全性が確立しており、当院での根治的前立腺全摘除術の標準となっております。 術後の入院期間は7日程度で、術後合併症としての尿失禁に関しても、近年の成績では 開腹術と遜色なく、1年後には9割程度の方がパッド不要の状態となっております。 また性機能の温存に関しても、手術での神経温存や薬物療法、電気刺激などで積極的に取り組んでおります。

図3
2. 放射線治療

各種の泌尿器系悪性腫瘍に対して放射線治療をおこなっておりますが特に前立腺がんに対する根治療法としての放射線治療は、原則的に局所に限局した前立腺癌が対象となります。

前立腺癌に対する放射線治療は大きく分けると前立腺の中から放射線を照射する方法(密封小線源療法)と、前立腺の外から放射線を照射する方法(外照射法)の2つに大きく分けられます。前者の密封小線源療法は、低い線量であるヨウ素125を用いた永久挿入密封小線源療法(LDR)と、高い線量であるイリジウム192を用いた高線量率組織内照射(HDR)に分けられ、外照射法は現在の標準的な方法である3次元原体照射法(3D-CRT)と、更なる高精度治療となる強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導放射線治療(IGRT)、および定位放射線治療(SRT)などがあげられます。北里大学病院では、前立腺がんに対する、上記に紹介させていただいた全ての放射線治療が可能となっております。


局所前立腺がんに対する部分治療(Focal therapy)への取り組みについて

3. 内分泌療法

前立腺癌が男性ホルモンに依存する特徴を利用し、男性ホルモンを抑えることで癌の増殖を抑える治療法です。 はじめは多くの癌で効果を認めますが、数年で内分泌療法が効かなくなり病勢の悪化をきたすことがあります。

4. 化学療法(抗癌剤)、分子標的薬

進行性前立腺癌に対する内分泌療法が無効である症例に対して、 主にタキサン系の抗癌剤(ドセタキセル、パクリタキセル)や分子標的薬(治験)による治療を行っております。