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泌尿器科の代表的な疾患


腎細胞がん

腎細胞がんとは


腎臓は背側の左右に1つずつあり、長さ15cm、重さ150〜200g程度のそら豆状の臓器です。 主な働きは尿をつくり体内の不要な物質を排泄することですが、その他に血圧や造血、骨の状態を調節する働きも担っています。

症状


血尿や腰背部痛を契機に発見されることもありますが、近年は健康診断(超音波、CT)などにより 無症状で発見されるケースが増加しています。 その他、発熱や貧血、体重減少を契機に発見されることもあります。

診断


超音波や造影剤を用いたCT、MRIで診断いたします。径の小さな腎腫瘍(2cm以下) に関しては、画像診断での良悪性が困難なこともありますが、組織を採取するような検査(生検)は癌細胞を撒き散らす可能性もあるために通常は行われません。 残念ながら現在のところ、尿検査や血液検査で腎細胞癌に特異的な腫瘍マーカーはありません。

治療法


腎細胞癌は放射線療法や抗癌剤が効きにくく、手術が唯一の根治的治療法です。

根治的腎摘除術という腫瘍側の腎臓を摘除する手術が一般的で、小さな腫瘍(一般手的に4cm以下)に対しては腫瘍の部位だけを切除する腎温存手術 (腎部分切除術)が選択されます。いずれの手術も、腹腔鏡下手術という最小限の切開で手術をすることが可能ですが、腫瘍の位置や大きさにより術式を決定いたします。

腫瘍が大血管に及んでいる場合は開胸を行い、血管内の手術を追加する場合もあります。

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薬物療法

転移性腎癌にはインターフェロンやインターロイキンなどの免疫療法やソラフェニブ、 スニチニブなどの分子標的薬などが使用されます。

根治切除不能または転移性の腎細胞がんに対するオプジーボ®の使用について

ヒト型抗ヒトPD-1(programmed cell death-1)モノクローナル抗体「オプジーボ®点滴静注20mg、100mg(以下、オプジーボ)」について、「根治切除不能または転移性の腎細胞がん」に対する適応が承認されました。

オプジーボ

腎細胞がんは、成人の腎実質に発生する悪性腫瘍です。腎悪性腫瘍の中で患者数が最も多く、毎年世界で11万人以上が亡くなっており、現在、治療歴を有する根治切除不能または転移性の腎細胞がんに対する新たな治療薬の開発が期待されています。

オプジーボ®は、腎臓がんに対する抗がん剤として使用されている血管新生阻害剤で治療をおこなったことのある手術ができないまたは他の臓器などに転移した腎細胞がん患者において生存期間の延長が期待される『免疫チェックポイント阻害剤』という抗がん剤です。

日本を含めて実施された臨床試験(CheckMate-025試験)ではオプジーボ治療群における生存期間は対照薬剤と比較して有意な延長を示しました。

非常に高額な薬剤であるため、使用にあたっては主治医と十分に相談の上、治療方針を決定してください。使用成績調査(全例調査)を実施し、安全性および有効性に関する臨床データを収集します。

放射線療法

腎細胞癌は放射線感受性が低く、根治療法としては用いられませんが、転移部位の痛みを和らげる効果は期待できます。

北里大学病院ではロボット支援下腎部分切除術が保険適応となりました

【腎癌に対する腎部分切除術】
腎にできた腫瘍を部分的に切除し正常部分を温存する術式です。4cm以下の腎癌に対する腎部分切除術は、腎臓機能保持において有用とされており再発、転移の可能性も腎臓を摘出する従来の根治的腎摘除術と同等であることから早期腎悪性腫瘍に対して積極的におこなわれています。
当院ではこれまで、腎部分切除術の低侵襲化をめざし腹腔鏡下腎部分切除術を積極的に施行してまいりましたが、このたび、さらに低侵襲かつ腎機能温存効果の高いロボット支援下腎部分切除術が保険の範囲内で実施できるようになりました。

図2 図3

腎部分切除では腎臓の血流を一時的に遮断し、出来るだけ短時間で腫瘍部分を切除し、摘出部の腎臓欠損部を縫い合わせる必要があります。腎臟の血流を長時間遮断すれば腎臓の機能は低下してしまうため、迅速かつ確実な切除と縫合操作が要求されます。 腹腔鏡手術は開腹の腎部分切除と比較すると大きな切開を必要としないため術後の痛みが少ないのが最大の利点ですが、術者にとって非常に高い技術が必要になります。

一方、ロボット支援腹腔鏡下手術は高解像度の3D画像を見ながら関節を有するロボット鉗子を用いて実施するため、切開や縫合を素早く確実に行うことが可能となっています。 開腹での腎部分切除に比べると退院や社会復帰も早期に出来ることが可能で、癌を治す成績も今までの治療法と同等と言われています。

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図5