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  • 当施設の標準的無痛分娩管理法・選択的誘発無痛分娩看護マニュアル

当施設の
標準的無痛分娩管理法
選択的誘発無痛分娩看護マニュアル
Management

当施設の標準的無痛分娩管理法
(硬膜外鎮痛, 脊髄くも膜下硬膜外併用鎮痛:CSE)

無痛分娩を行う体制(1〜5)

  1. 1. 誘発麻酔分娩の両親学級
    • 毎月1回開催
    • 麻酔科医より硬膜外鎮痛の手順、分娩中のすごし方、利点、副作用、合併症などを説明
    • 産科医より誘発分娩、硬膜外鎮痛の分娩への影響について説明
    • 質疑応答
  2. 2. インフォームドコンセントの取得
    • 産科主治医より誘発分娩と麻酔分娩の同意書を渡し、入院までに署名し持参してもらう
  3. 3. 硬膜外鎮痛を担当する麻酔科医師
    • 麻酔科後期研修4年目以上
    • 硬膜外カテーテル留置100例以上の経験がある
    • 循環虚脱、呼吸不全などの母体急変に対して適切な蘇生処置ができる
  4. 4. 分娩誘発を担当する産科医師
    • 主治医制.産婦人科専門医取得後の産科医が主治医(誘発責任者)として担当する
  5. 5. 無痛分娩を施行する場所
    • 原則として分娩室または分娩待機室(分娩エリア:清浄度クラス1,000の環境)
    • 母体に自動血圧計装着とSpO2連続モニタリングができる
    • 急変時に対応する設備がある(酸素供給,口腔内吸引装置,救急カート,人工呼吸装置)
    • 胎児心拍数陣痛図の装着が可能で,分娩監視室・スタッフ待機室でモニターの監視ができる
    • 保温された細胞外液、エフェドリン希釈液(40mg/10mL)、リトドリン希釈液(100mcg/2mL)の準備ができている
    • 輸血保冷庫が分娩エリア内に設置されている

無痛分娩の管理(6〜11)
- 産科麻酔部門 -

  1. 6. 硬膜外鎮痛前の情報収集
    • 妊娠後期の血液止血凝固能を含む血液、尿検査をチェックする。
    • 既往歴、家族歴、服用薬、アレルギー、身体所見(気道、脊柱、神経障害の有無を含む)などの確認をする。
    • 妊娠経過、胎児合併症、推定児体重
    • 分娩に関する要望
  2. 7. 硬膜外鎮痛開始時の確認事項
    • 破水や感染の有無、現在の分娩の進行状況、Visual analogue scale (VAS、視覚的疼痛尺度)。
    • 無痛分娩を開始することの患者の同意。
    • 無痛分娩を開始することの担当産科医の同意。
    • 産科医と分娩エリアにいて硬膜外鎮痛開始後の状態変化に対応できる。
    • 末梢静脈路が確保され、輸液が開始されている。
    • 自動血圧計、パルスオキシメータが装着されている。
    • 血圧・脈拍数・SpO2。
  3. 8. 脊髄くも膜下穿刺、硬膜外カテーテル留置
    • 硬膜外単独またはCSEAの選択は麻酔科指導医の判断による。
    • 硬膜外穿刺器材を展開してカテーテル留置をしている際は、室内にいる医療スタッフは、ディスポーザブルの帽子とマスクを正しく着用する。
    • 担当麻酔科医は、硬膜外鎮痛施行前にアルコール製剤による手指消毒を行なった上で、清潔な手袋を装着してから麻酔(鎮痛)手技を行う。
    • 穿刺部の皮膚消毒は、アルコールを含む消毒液(クロルヘキシジンまたはポピドンヨード)を用いて行う。
    • 座位にてL3/4より穿刺を行う。L3/4で穿刺が困難なときにはL4/5を選択する。
    • 正中アプローチを第一選択とする。
    • 穿刺、カテーテル留置手技中に放散痛の訴えがあったら、針カテーテルを引き、放散痛の位置を確認する。
    • 穿刺部位、硬膜外腔までの距離、脊髄くも膜下穿刺の有無、硬膜外カテーテル挿入長、吸引テストの結果、放散痛の有無(ある場合にはその部位)、その他のイベントについてカルテ記載する。
  4. 9. 鎮痛薬投与
    • 痛みの程度や分娩の進行状況によって薬剤の種類や用量を変更する場合があるので、その都度麻酔科指導医に相談する。
    • 鎮痛の導入
      • 脊髄くも膜下鎮痛:ブピバカイン2mg+フェンタニル20mcg。
      • 硬膜外鎮痛:0.2%ロピバカインまたは0.2%レボブピバカインを8~12mL。吸引テストをしながら、3~4mLずつの少量分割投与を行う。
    • 鎮痛の維持
      • (0.08%ロピバカインまたは0.08%レボブピバカイン+フェンタニル2mcg/mL)を8~12mL/時。
      • 投与方法はシリンジポンプによる持続投与、またはCADD SolisによるProgrammed intermittent bolus(PIB、計画的間歇ボーラス投与)。
    • 追加薬剤の投与タイミングや用量については麻酔科指導医と相談する。
  5. 10.硬膜外鎮痛中のルーチン管理
    1. ① 硬膜外鎮痛開始から分娩2時間後までを通して
      • 医療スタッフがベッドサイドにいる。やむをえずベッドサイドを離れる際にはナースコールボタンを患者に渡す。
      • 無痛分娩担当麻酔科医は分娩エリアから離れない。やむをえず離れるときには他の分娩エリア担当医師に申し送りをする。
      • 自動血圧計と連続パルスオキシメータを装着し、連続的に脈拍数、SpO2を監視する。血圧の測定間隔は下記参照。(計測値は自動的にパルトグラムに記録される)
      • 少なくとも2時間毎に以下を行い、パルトグラムに記録する。
        • 冷覚消失・低下域の評価
        • 体位交換、Bromageスケールの評価
        • 体温測定(助産師による)
        • 導尿(助産師による)
      • 歩行はせず、ベッド上で過ごす。
      • 絶食。経口補水液(OS-1)の摂取は可。ただし帝王切開術の可能性が高まったら絶飲食とする。
    2. ② 硬膜外鎮痛開始直後(~30分程度)
      • 仰臥位を避ける。
      • 母児から離れずに監視を行う。
      • 意図せぬ脊髄くも膜下薬剤注入がないかを確認する。
      • 硬膜外無痛分娩開始後のバイタルチェックは、0〜15分まで2.5分間隔、15~30分は5分間隔、30〜60分は15分間隔とする。
      • 低血圧(収縮期血圧が通常の20%以下または80mmHg以下)を認めたときには、下肢挙上と輸液急速負荷(300~500mL)を行う。昇圧剤投与については麻酔科指導医と相談する。
      • 胎児心拍数の低下がないか、監視をする。
      • VASの評価(十分な鎮痛が得られているか)
      • 左右の冷覚低下・消失域の評価。Bromageによる運動神経遮断評価。
    3. ③ 硬膜外鎮痛開始直後(~30分程度)
      • 自動血圧計とパルスオキシメータにて、血圧、脈拍数、SpO2を監視する。血圧測定間隔は60分。母児の状態によって適宜短縮。
      • 分娩の進行状況、胎児の状態を把握しておく。
    4. ④ 努責開始から分娩室退室まで
      • バイタルサインチェック5~15分毎とする。
      • 胎盤がスムーズに娩出されることを確認。
      • 産後出血量を確認。出血量が多いときには輸液・輸血、血液検査をはじめとした全身管理を担当する。
      • 産道裂傷や会陰切開部の縫合が終了するころに硬膜外注入を終了する。
      • 硬膜外カテーテル抜去は医師に確認のうえ、看護師が行う。出血量が多いとき、凝固障害が予想されるときには慎重な判断が必要。
    5. ⑤ 分娩室退室後
      • 感覚・運動神経遮断からの回復を観察する(看護師が初期チェック)。麻酔終了後6時間で完全に回復していない場合には、麻酔科医または産科医コール。コール時には、無痛分娩後神経障害鑑別フローチャートに従って診察し対処する。
  6. 11. トラブルシューティング
    1. ① 産婦が痛みを訴えたとき
      • Visual analogue scale (VAS、視覚的疼痛尺度)、痛みの部位と性状、分娩進行状況、冷覚低下領域を確認し、パルトグラムに記載。
      • 産科麻酔部門指導医と相談し、薬剤の追加投与を行う。
      • 冷覚低下域に左右差があるようなら、体位変換、カテーテルの引き抜き(0.5~1cmくらい)を検討。
    2. ② 努責開始から分娩室退室まで
      • 麻酔科医は、産科医とともにベッドサイドへ駆けつける。
      • 母体の意識レベル、血圧、脈拍数、SpO2を確認する。
      • 低血圧の場合、子宮左方転位し、昇圧薬を投与。
      • 過強陣痛の場合は、産科医が希釈リトドリンを投与する場合あり。
      • 緊急CSの可能性が出た段階で、手術麻酔のための硬膜外投与薬、手術室の準備を始める(産科麻酔部門指導医と相談)。
    3. ③ 重大な合併症に対する対応
    4. ③ -1 局所麻酔薬中毒
      • 局所麻酔薬中毒を起こさないための予防策(薬剤を投与する度の硬膜外カテーテルの吸引テスト、患者を監視しながらの少量分割注入)が最も大切である。
      • 初期症状(金属味、不穏、興奮)を認めたときには、ただちに局所麻酔薬の投与を中止し、応援医師を呼ぶ。救急カートを用意し、心電図を追加装着し患者の監視を続ける。
      • 意識障害、痙攣、重症不整脈、循環虚脱などを認めた場合には分娩室に常備してある20%脂肪乳剤を静脈内投与する。投与量は脂肪乳剤容器に示したとおり。
      • 同時に、必要に応じて補助呼吸や人工呼吸を行いつつ、循環作動薬や輸液を用いて循環動態の安定を図る。
      • 危険な不整脈、循環虚脱の悪化を認めたら、院内119コールをし、PCPSの準備を考慮する。
    5. ③ -2 全脊髄くも膜下麻酔
      • 薬剤用量に見合わない麻酔効果などから、意図しない脊髄くも膜下投与に早い段階で気づき、全脊髄くも膜下麻酔を未然に防ぐことが最も大事である。
      • 鎮痛開始後の呼吸循環の管理中、全脊髄くも膜下麻酔を疑う所見(投与用量に見合わない麻酔の効き)が見られたら硬膜外カテーテルを吸引し、髄液が引ければそれ以上の薬液注入をしない。
      • 心電図モニターを追加し、その場を離れず麻酔効果が減弱するまで患者を監視する。
      • 全脊髄くも膜下麻酔を強く疑う所見(意識消失、徐脈、低血圧、呼吸抑制)が見られたら、気道確保をし、呼吸の補助(補助呼吸、人工呼吸)を行いつつ(意識が残っている場合には鎮静を行う)、循環作動薬や輸液を用いて循環動態の安定を図る
    6. ③ -3 硬膜外血腫(無痛分娩後)
      • 両側性に感覚または運動障害がある、帰室時よりも感覚または運動障害が悪化、拡大している、硬膜外または脊髄くも膜下麻酔穿刺部に叩打痛があるなど硬膜外血腫を疑う所見が一つでも見られたら、硬膜外血腫のルールアウト(血算/凝固能チェックと腰部MRI撮影)を行う。
      • 硬膜外血腫が確定診断されたら整形外科医と連携して緊急手術の適応について可及的速やかに検討する。

誘発分娩の管理(12〜17)
– 産科 -

  1. 12.誘発時期の決定

    妊娠36週に産科外来で以下のことをおこなう

    1. ① 腟内の培養検査を施行し,GBSの有無を確認する
    2. ② 児の胎位を確認する
    3. ③ 子宮口の状態(児頭の高さ,開大度,展退度,頸管に位置と硬さ)を評価
    4. ④ 経腟超音波で胎盤と臍帯が子宮口付近に無いか確認する

      妊娠36週に産科外来で以下のことをおこなう

      • ※ 母児に合併症がある場合には早産時期や頸管熟化が進んでいない時期の誘発を行うことがある。この場合にはいつでも帝王切開に切り替えられるようダブルセットアップとしている
      • ※ 予定日を超過した場合には頸管熟化が進んでいなくても分娩誘発を行うことがある
  2. 13.入院当日の管理

    誘発前日に入院し,胎児心拍数陣痛図で児の状態を確認する

    • 器械的頸管拡張: Bishop score 4点以下あるいは子宮口の開大度が1.5cm以下の場合には、誘発前日の夕方にミニメトロ(40ml)を挿入する。挿入後は再度,胎児心拍数陣痛図を装着する
  3. 14.誘発当日の管理
    • 分娩進行中は胎児心拍数陣痛図を継続的に装着し、モニターの監視を行う。
    • 1名の分娩担当責任医師を含む複数の産科医師が分娩を担当し,分娩エリアから離れない。
    • 分娩経過はパルトグラムに記録する。
    • 経口経管熟化薬:早朝5時からプロスタグランジンE2錠を1時間ごとに内服する。ただし、陣発している場合には内服しない。※喘息合併,喘息の既往,薬剤アレルギーの方は内服しない。
    • 子宮収縮薬(陣痛促進薬):8時頃(プロスタグランジンE2の最終内服1時間後)よりオキシトシン(アトニンO®)の持続静脈内投与を開始する。オキシトシン5単位を500mlの5%ブドウ糖に溶解し,12ml/時(2ミリ単位/分)から開始し30分ごとに12ml/時増量する。子宮収縮を観察しながら概ね48~60ml/時(8-10ミリ単位/分)で維持し分娩進行を観察する。ミニメトロが滑脱していない場合は抜去する。オキシトシンの最大点滴速度は120ml/時(20ミリ単位/分)とする。
    • 人工破膜:児頭が‐2cmより下降し概ね子宮口が3cm開大した時点で人工破膜を施行し,内側陣痛計と児頭電極を装着する。破膜前には臍帯の位置と胎児心拍数陣痛図に異常がないことを確認する。人工破膜を行わない場合には,外側計を用いる。
  4. 15.無痛分娩開始後の産科管理(「無痛分娩の管理」6~10項を参照)
    • 産婦の要求があれば,子宮口の状態に関わらず鎮痛を開始する
    • 2時間ごとに助産師による診察を行い,子宮口の状態を確認する
    • 褥瘡防止のため,2時間ごとに助産師による体位変換を行う
    • 排尿障害防止のため,2時間ごとに助産師による導尿を行う
  5. 16.再誘導

    17~18時の時点で活動期に入っていなければ、一旦オキシトシンは中断し、翌日再誘導とすることを検討する。夜間陣痛が強くなった場合には留置している硬膜外カテーテルより局所麻酔薬を投与することがある

  6. 17.帝王切開への切り替え
    • 以下の場合には,分娩方法を経腟分娩から帝王切開に切り替える
      1. ① 高度な胎児心拍数異常の出現時
      2. ② 分娩進行がなく,経腟分娩が困難と判断した時
      3. ③ 母体状況の悪化により経腟分娩が困難と判断した時
      4. ④ 母児にリスクがあると判断した時

当施設の無痛分娩実績(18)-産科-

  1. 18.当院の無痛分娩実績

    当院では, 1980年代より硬膜外麻酔を用いた無痛分娩を導入しています。図1は分娩数と無痛分娩数の年次変化です。近年の分娩件数は概ね1000件でその約40%が無痛分娩です。

    分娩数と無痛分娩数の年次変化

    分娩数と無痛分娩数の年次変化

    当院の無痛分娩の比率

    2015-6年の2年間では 全分娩数の39%の方が無痛分娩をおこないました。
    これは経腟分娩を選んだ産婦の58%にあたります。

    2015-6年の無痛分娩の比率

    2015-6年の無痛分娩の比率

    無痛分娩をおこなった場合の最終分娩方法

    無痛分娩をおこなった方の9%は帝王切開に切り替えています。経腟分娩の場合でも 吸引分娩は29%,鉗子分娩は4%で麻酔をおこなわない時より増加します。ただし,双胎や帝王切開後試験経腟分娩(TOLAC),母体合併症の方の無痛分娩施行例も含みます。

    無痛分娩施行例の最終分娩方法

    無痛分娩施行例の最終分娩方法

当施設の説明・同意書(19)

以上の説明につき、ご不明の点がありましたら,おかかりの産科主治医にお問い合わせください。

(2022年9月1日)

北里大学病院周産母子成育医療センター
選択的誘発無痛分娩看護マニュアル

1.妊娠中の看護

  1. 当院での分娩希望者には誘発・無痛分娩に関するDVD視聴を案内する。
  2. 妊娠後期には誘発・無痛分娩のオリエンテーションを必要に応じて個別に行う。
  3. 妊婦の希望に合わせて意思決定が行えるように支援する。

2.入院時

  1. 母児の情報収集(妊娠経過、既往歴、家族歴、服用薬、アレルギー等)とリスクの評価を行う。
  2. 誘発・無痛分娩に関するDVD視聴が済んでいることを確認し、産婦の疑問や不安の解消に努める。
  3. 患者用パスに沿って、入院中のスケジュールを説明する。
  4. 「分娩誘発・促進」「無痛分娩」の説明・同意書の有無、署名の確認を行う。
  5. 分娩中の管理や投薬内容について医師から指示を受ける。
  6. 分娩誘発前日は、診察介助(必要時ミニメトロ挿入)を行う。
  7. ミニメトロ挿入後、胎児心拍数陣痛図(CTG)を装着し、子宮収縮の程度や胎児の状態を観察する。
    異常があれば医師に報告する。
  8. 21時以降は禁食であることを確認する。

3.誘発・無痛分娩当日

1)準備

  1. 誘発・無痛分娩開始前に、血圧低下や子宮頻収縮に備えてレスキュー薬を準備。
    • リトドリン希釈液 (100μg/2ml)・・・ 5%ブドウ糖19ml+ウテメリン(10mg/1ml)→2mlを分注
    • エフェドリン希釈液(40mg/8ml) ・・・生理食塩液7ml+エフェドリン(40mg/1ml)
  2. 保温された細胞外液・膠質液の確認。
  3. 救急蘇生カートの点検。
  4. PPHカートの点検(PPH:postpartum hemorrhage 分娩後異常出血)。
  5. 分娩室の器械作動点検(分娩台、吸引器、麻酔器、モニター類)。
  6. 新生児蘇生物品の点検、インファントウォーマー作動点検。
  7. 分娩待機室のベッドサイドに、酸素マスク、ナースコール、ベッド柵、安楽枕を準備。

2)情報共有

  1. 分娩に関わる多職種でのブリーフィングの実施。
  2. NICUスタッフへ、ハイリスク産婦の分娩進行状況を情報提供。
  3. 手術室スタッフへ、分娩予定者の情報提供。

3)分娩進行中のケアと記録

  1. 分娩進行時は、常に母体生体情報モニターとCTGを装着し母児の状態を把握する。
    • 産婦のバイタルサインを含む処置内容や投薬に関しては、産科電子カルテ内のパルトグラムに記録する(一部自動取り込み)。
    • CTGは産科電子カルテ内に保存され、PDF形式で患者カルテに送信される。
      かつ紙ベースでも保存する。
  2. 異常所見出現時、または異常が疑われる場合は、分娩担当産科医師(または主治医)及び麻酔科医師に報告する。
  3. 子宮収縮薬投与前に末梢静脈ルート(18G)を確保し輸液を開始する。
  4. 陣痛間隔や胎児の状態を確認の上、医師の指示に従って促進剤の投与を行う。
  5. 陣痛の程度をVAS(Visual Analogue Scale)スケールで評価し、鎮痛開始に関する産婦の希望を確認する。
  6. 鎮痛開始の希望があった場合は、産科医の了解を得た上で麻酔科医師へ鎮痛開始の依頼をする。

4)鎮痛開始の介助

  1. ディスポーザブル帽子とマスクを装着する。
  2. 血圧計とSpO2モニターを装着し、バイタルサインや陣痛の程度、CTG所見を確認する。
    血圧計は自動計測2.5分おきに設定。
  3. 産婦に硬膜外鎮痛導入の体勢を説明し、介助を行う。
  4. 産婦の恐怖感や体位保持への苦痛に配慮して適宜声掛けを行い、スムーズに鎮痛開始が行えるよう援助する。
  5. 鎮痛開始後、穿刺部が後羊水や血液で汚染されないように、透明なドレッシング材で刺入部を覆う。体動でカテーテルが抜けないように脊柱を避けた背部に固定する。

5)鎮痛開始直後のケア

  1. 鎮痛開始後、産婦を半側臥位にし、バイタルサインとCTGの変動を監視する。
  2. 特に鎮痛薬投与後の母体低血圧とそれに伴う胎児の一過性徐脈に注意する。
    母体血圧の測定間隔は、導入~15分・・・2.5分毎
    15~30分・・・・5分毎
    30~60分・・・・15分毎
    60分以降・・・・60分毎
    血圧低下時は医師へ報告、下肢挙上や保温された細胞外液投与等、指示に従い実施する。
  3. 鎮痛開始前に、抗菌薬の投与がされていない場合は、その後に投与する。

6)無痛分娩経過中のケア

  1. バイタルサインの測定間隔。
    • SpO2・心拍数・・・持続モニタリング
    • 血圧・・・・・・・・60分毎
    • 体温・呼吸・・・・・2時間毎
    ※DVT最高リスク妊婦や全身管理を要する妊婦については心電図モニターを装着。
  2. Bromageスケールに沿って運動神経麻痺の状態を2時間毎に確認する。
  3. 鎮痛効果に変化が生じた際は、VASスケールで評価し麻酔科医師へ報告する。
  4. 鎮痛により膀胱充満感を感じないため2~3時間毎に導尿を行う。
  5. 軽い半側臥位を保ち、少なくとも2時間毎に体位変換をする。
  6. 弾性ストッキングが正しく着用されているか観察する。
  7. DVTリスクアセスメント評価に従って、個々にDVT防止策を行う(足関節運動など)。
  8. 異常出血や多量の羊水流出,子宮頻収縮を自覚できないことがあるため,助産師がその兆候を観察する。
  9. 硬膜外カテーテル刺入部の出血・腫脹の有無,カテーテルの抜けやずれの有無を観察する。
  10. 陣痛の強さや持続時間,胎位胎向は触診で確認し助産診断する(自然分娩と同様)。
  11. 分娩時の努責・呼吸法の指導を行う。
  12. 回旋異常の有無を診断し、回旋異常がある場合は,児頭が回旋し易い産婦の体位を工夫する。
  13. 産婦に分娩進行状況や実施しているケアを適宜説明しながら産婦の傍で分娩経過を観察し援助する。

7)分娩時のケアと記録

  1. 直接介助者・間接介助者は、産婦を安全に分娩台へ移動させる。
    • 分娩室へ移動後の記録は、全て産科電子カルテ内の分娩記録に記載する。
  2. 母体生体情報モニターとCTGを装着する。
  3. 分娩介助・・・硬膜外鎮痛により効果的な努責が加えられない可能性があるため、陣痛に合わせて(CTGを見て)努責のタイミングを指導し誘導する。
  4. 吸引分娩・鉗子分娩へ移行する可能性を念頭におき、分娩介助を行う。
  5. 児の蘇生は新生児蘇生法(NCPR)アルゴリズムに沿って観察・ケアを行う。

8)分娩後のケア

  1. 母体バイタルサインや出血量を確認し、異常出血があれば産科医師へ報告する。
  2. 産褥復古状況が良好(異常出血がない)かつ分娩前直近の採血で凝固系に異常がない場合、帰室前に麻酔科医師が硬膜外カテーテルを抜去し、助産師はその介助を行う。
    硬膜外カテーテル抜去基準を満たさない場合は、産科医師・麻酔科医師の指示の元、翌日以降に抜去する。
  3. 分娩後1~2時間毎を目安に、以下を観察・ケアする。
    • 産褥復古状況(子宮底の高さ・子宮硬度・異常出血の有無・創部状態 等)
    • 麻酔薬からの回復状態(膝立て保持の有無・知覚鈍麻の有無・足関節背屈の可否 等)
    • 硬膜外カテーテル抜去部の観察
    • 必要時(膀胱充満の程度に応じて)導尿
  4. 分娩6時間後を目安に歩行開始する(初回歩行時にトイレ誘導はせず、歩行の安定性を確認する)。
  5. 尿意が緩慢であることが多いため、定期的な排尿誘導を行う。

4. バースレビューの実施

出産体験を十分に傾聴し受け止める。
出産を終えた女性が自己の出産体験を表現することを助けるため、産褥2日目頃に出産に立ち会った助産師が行う。

2018年6月1日作成
2022年8月1日修正

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