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- 当施設の標準的無痛分娩管理法・選択的誘発無痛分娩看護マニュアル
当施設の
標準的無痛分娩管理法
選択的誘発無痛分娩看護マニュアル
Management
当施設の標準的無痛分娩管理法
(硬膜外鎮痛, 脊髄くも膜下硬膜外併用鎮痛:CSE)
- 本プロトコールはローリスク妊婦を対象とした標準的な無痛分娩管理法である。
- 合併症を持つ場合、分娩進行などの状況によって標準管理法から逸脱する場合がある。
当施設の無痛分娩実績(18)-産科-
- 18.当院の無痛分娩実績
当院では, 1980年代より硬膜外麻酔を用いた無痛分娩を導入しています。図1は分娩数と無痛分娩数の年次変化です。近年の分娩件数は概ね1000件でその約40%が無痛分娩です。
当院の無痛分娩の比率
2022-2023年の2年間では 全分娩数の39%の方が無痛分娩をおこないました。
これは経腟分娩を選んだ産婦の58%にあたります。
無痛分娩をおこなった場合の最終分娩方法
無痛分娩をおこなった方の13%は帝王切開に切り替えています。経腟分娩の場合、吸引分娩は42%,鉗子分娩は8%で鎮痛をおこなわない時より増加する傾向にあります。ただし,双胎や帝王切開後試験経腟分娩(TOLAC),母体合併症の方のハイリスクな無痛分娩施行例も含みます。
無痛分娩施行例の最終分娩方法
以上の説明につき、ご不明の点がありましたら,おかかりの産科主治医にお問い合わせください。
(2024年7月1日)
北里大学病院周産母子成育医療センター
選択的誘発無痛分娩看護マニュアル
- 本看護マニュアルはローリスク妊婦を対象とした標準的な誘発・無痛分娩に対するものである。
1.妊娠中の看護
- 当院での分娩希望者には誘発・無痛分娩に関する動画視聴を案内する。
- 妊娠後期には誘発・無痛分娩のオリエンテーションを必要に応じて個別に行う。
- 妊婦の希望に合わせて意思決定が行えるように支援する。
2.入院時
- 母児の情報収集(妊娠経過、既往歴、家族歴、服用薬・サプリメント、アレルギー等)とリスクの評価を行う。
- 誘発・無痛分娩に関する動画視聴が済んでいることを確認し、産婦の疑問や不安の解消に努める。
- 患者用パスに沿って、入院中のスケジュールを説明する。
- 「分娩誘発・促進」「無痛分娩」の説明・同意書の有無、署名の確認を行う。
- 分娩中の管理や投薬内容について医師から指示を受ける。
- 分娩誘発前日は、診察介助(必要時ミニメトロ挿入)を行う。
- ミニメトロ挿入後、胎児心拍数陣痛図(CTG)を装着し、子宮収縮の程度や胎児の状態を観察する。
異常があれば医師に報告する。
- 21時以降は禁食であることを確認する。
3.誘発・無痛分娩当日
1)準備
- 誘発・無痛分娩開始前に、血圧低下や子宮頻収縮に備えてレスキュー薬を準備。
- リトドリン希釈液 (500μg/ml)・・・ 5%ブドウ糖19ml+ウテメリン(10mg/1ml)→2mlを分注
- エフェドリン希釈液(5mg/ml) ・・・生理食塩液7ml+エフェドリン(40mg/1ml)
- 保温された細胞外液・膠質液の確認。
- 救急蘇生カートの点検。
- PPHカートの点検(PPH:postpartum hemorrhage 分娩後異常出血)。
- 分娩室の器械作動点検(分娩台、吸引器、麻酔器、モニター類)。
- 新生児蘇生物品の点検、インファントウォーマー作動点検。
- 分娩待機室のベッドサイドに、酸素マスク、ナースコール、ベッド柵、安楽枕を準備。
2)情報共有
- 分娩に関わる多職種でのブリーフィングの実施。
- NICUスタッフへ、ハイリスク産婦の分娩進行状況を情報提供。
- 手術室スタッフへ、分娩予定者の情報提供。
3)分娩進行中のケアと記録
- 分娩進行時・子宮収縮薬投与時は、常に母体生体情報モニターとCTGを装着し母児の状態を把握する。
- 産婦のバイタルサインを含む処置内容や投薬に関しては、産科電子カルテ内のパルトグラムに記録する(一部自動取り込み)。
- CTGは産科電子カルテ内に保存され、PDF形式で患者カルテに送信される。
かつ紙ベースでも保存する。
- 異常所見出現時、または異常が疑われる場合は、分娩担当産科医師(または主治医)及び麻酔科医師に報告する。
- 子宮収縮薬投与前に末梢静脈ルート(18G)を確保し輸液を開始する。
- 陣痛間隔や胎児の状態を確認の上、医師の指示に従って子宮収縮薬の投与を行う。
- 陣痛の程度をVAS(Visual Analogue Scale)スケールで評価し、鎮痛開始に関する産婦の希望を確認する。
- 鎮痛開始の希望があった場合は、産科医の了解を得た上で麻酔科医師へ鎮痛開始の依頼をする。
4)鎮痛開始の介助
- ディスポーザブル帽子とマスクを装着する。
- 血圧計とSpO2 モニターを装着し、バイタルサインや陣痛の程度、CTG所見を確認する。
血圧計は自動計測2.5分おきに設定。
- 産婦に硬膜外鎮痛導入の体勢を説明し、介助を行う。
- 産婦の恐怖感や体位保持への苦痛に配慮して適宜声掛けを行い、スムーズに鎮痛開始が行えるよう援助する。
- 区域麻酔による鎮痛開始後、後羊水や血液で汚染されないように、透明なドレッシング材で刺入部を覆う。体動でカテーテルが抜けないように脊柱を避けた背部に固定する。
5)鎮痛開始直後のケア
- 鎮痛開始後、産婦を半側臥位にし、バイタルサインとCTGの変動を監視する。
- 特に鎮痛薬投与後の母体低血圧とそれに伴う胎児の一過性徐脈に注意する。
母体血圧の測定間隔は、導入~15分・・・2.5分毎
15~30分・・・・5分毎
30~60分・・・・15分毎
60分以降・・・・60分毎
血圧低下時は医師へ報告、下肢挙上や保温された細胞外液投与等、指示に従い実施する。
- 鎮痛開始前に、抗菌薬の投与がされていない場合は、その後に投与する。
6)無痛分娩経過中のケア
- バイタルサインの測定間隔。
- SpO2・心拍数・・・持続モニタリング
- 血圧・・・・・・・・60分毎
- 体温・呼吸・・・・・2時間毎
※DVT最高リスク妊婦や全身管理を要する妊婦については心電図モニターを装着。
※麻酔による発熱に注意する。
- Bromageスケールに沿って運動神経麻痺の状態を2時間毎に確認する。
- 鎮痛効果に変化が生じた際は、VASスケールで評価し麻酔科医師へ報告する。
- 子宮収縮薬の投与速度を調整し、適切な陣痛を維持する。
- 鎮痛により膀胱充満感を感じないため2~3時間毎に導尿を行う。
- 軽い半側臥位を保ち、少なくとも2時間毎に体位変換をする。
- 弾性ストッキングが正しく着用されているか観察する。
- DVTリスクアセスメント評価に従って、個々にDVT防止策を行う(足関節運動など)。
- 異常出血や多量の羊水流出,子宮頻収縮を自覚できないことがあるため,助産師がその兆候を観察する。
- 硬膜外カテーテル刺入部の出血・腫脹の有無,カテーテルの抜けやずれの有無を観察する。
- 陣痛の強さや持続時間,胎位胎向は触診で確認し助産診断する(自然分娩と同様)。
- 分娩時の努責・呼吸法の指導を行う。
- 回旋異常の有無を診断し、回旋異常がある場合は,児頭が回旋し易い産婦の体位を工夫する。
- 産婦に分娩進行状況や実施しているケアを適宜説明しながら産婦の傍で分娩経過を観察し援助する。
7)分娩時のケアと記録
- 直接介助者・間接介助者は、産婦を安全に分娩台へ移動させる。
- 分娩室へ移動後の記録は、全て産科電子カルテ内の分娩記録に記載する。
- 母体生体情報モニターとCTGを装着する。
- 分娩介助・・・硬膜外鎮痛により効果的な努責が加えられない可能性があるため、陣痛に合わせて(CTGを見て)努責のタイミングを指導し誘導する。
- 吸引分娩・鉗子分娩へ移行する可能性を念頭におき、分娩介助を行う。
- 児の蘇生は新生児蘇生法(NCPR)アルゴリズムに沿って観察・ケアを行う。
8)分娩後のケア
- 母体バイタルサインや出血量を確認し、異常出血があれば産科医師へ報告する。
- 産褥復古状況が良好(異常出血がない)かつ分娩前直近の採血で凝固系に異常がない場合、帰室前に麻酔科医師が硬膜外カテーテルを抜去し、助産師はその介助を行う。
硬膜外カテーテル抜去基準を満たさない場合は、産科医師・麻酔科医師の指示の元、翌日以降に抜去する。
- 分娩後1~2時間毎を目安に、以下を観察・ケアする。
- 産褥復古状況(子宮底の高さ・子宮硬度・異常出血の有無・創部状態 等)
- 麻酔薬からの回復状態(膝立て保持の有無・知覚鈍麻の有無・足関節背屈の可否 等)
- 硬膜外カテーテル抜去部の観察
- 必要時(膀胱充満の程度に応じて)導尿
- 分娩6時間後を目安に歩行開始する(初回歩行時にトイレ誘導はせず、歩行の安定性を確認する)。
- 尿意が緩慢であることが多いため、定期的な排尿誘導を行う。
4. バースレビューの実施
出産体験を十分に傾聴し受け止める。
出産を終えた女性が自己の出産体験を表現することを助けるため、産褥2日目頃に出産に立ち会った助産師が行う。