産科麻酔
anesthesia

産科麻酔 部門長 奥富 俊之

産科麻酔部門長(主任)の奥富俊之と申します。産科麻酔部門とは、主として「産科の麻酔を専門とする医師の集団」とする部門とお考えください、本院当部門は、そのような我々が産科病棟/分娩室内に常駐する体制を取っています。当部門は、2010年に周産期センター内に全国の大学病院としては2番目に設置されました。以降、院内だけでなく全国、時には海外からの研修医期間修了後の研修生をさらに産科麻酔科医として育成し、最近ではその中の一部の人たちが他施設の産科麻酔部門長として活躍をするようになりました。このように当部門での診療レベルは全国のモデルケースとなるようなレベルであると自負しております。妊娠中に何か麻酔に関してお聞きになりたいこと、ご心配なことがあれば、産科主治医を通してご予約いただければいつでも対応いたします。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

『産科麻酔』とは?

皆さんは「麻酔科医」と聞いてどんなイメージを抱かれるでしょうか。多くの方が手術室やペインクリニックの外来に勤務している様子を想像される、または全くその仕事は未知で想像もつかないという方も多いのかもしれません。しかし実のところ、私たち麻酔科医の活躍の場は年々多方面に拡大しています。麻酔科医は、呼吸や心臓の状態、脳神経系の異常や栄養状態など、まさに全身を診ることを得意としています。全身管理に長けたその特徴を生かし、手術室だけでなく集中治療室や救急外来、緩和ケア病棟などにも進出していますが、産科病棟もその1つです。無痛分娩や帝王切開術などの麻酔以外にも重症妊産婦(合併症の多い妊婦や産後に大量出血や急変をきたした妊婦など)の全身管理などを麻酔科医が行う「産科麻酔」という分野があり、とくに欧米では一般的となっています。この「産科麻酔」を専門として妊産婦の安全な全身管理を行う麻酔科医のことを「産科麻酔科医」と言います。
北里大学病院は欧米のような産科麻酔科医が産科病棟に常駐する体制をとる、全国でも数少ない施設の1つです。また大学病院としては無痛分娩件数が極めて多く、年間症例数はおよそ400例です。年間帝王切開術数も約400例で、これらのほとんどを産科麻酔科医によって麻酔管理しています。産科麻酔科医の役割は帝王切開術の麻酔や無痛分娩だけではなく、妊娠中に行われる産科・非産科手術の麻酔、合併症を持つ妊婦の分娩中の麻酔、胎児治療の麻酔などにも及びます。さらに産科危機的出血をはじめとした産科救急の急性期管理や新生児蘇生にも積極的に関わります。私たち産科麻酔科医は、産科医、新生児科医、助産師・看護師、その他関係各処と協力し、すべての妊産婦さんが安全で快適な分娩ができるよう妊産婦の特徴を熟知した全身管理医として周産期医療に関わっています。

主に取り扱っている疾患

  1. 無痛分娩
    主に脊髄くも膜下硬膜外併用鎮痛(CSEA: combined spinal-epidural analgesia)または硬膜穿刺硬膜外鎮痛(DPE: dural puncture epidural analgesia)による無痛分娩を提供しています。脳血管障害合併妊娠、心疾患合併妊娠などのハイリスク妊娠は硬膜外鎮痛法による無痛分娩の医学的適応例ですが、それ以外でも妊娠高血圧症候群に対しても無痛分娩を行うことで安全な分娩に寄与しています。産婦の希望を含めると、経腟分娩の約65%は区域鎮痛による分娩管理例です。無痛分娩開始後はもちろん、開始前から妊婦の情報を産科医、助産師と共有し、麻酔管理にあたっています。無痛分娩についての詳細は無痛分娩Q&A❒をご覧ください
  2. 帝王切開術
    予定手術から超緊急症例まで、様々な状況の帝王切開術に対応します。最新の知見をとりいれた根拠に基づいた医療を提供しています。また産科危機的出血に対する集学的治療、術後痛への対応も積極的に行っています。
  3. 産科的処置の麻酔
    早産防止のための頸管縫縮法や流産手術、胎児治療の麻酔なども産科麻酔科医が行っています。
  4. 新生児蘇生や産科危機的出血などの妊婦急変への対応
    全身管理を得意とする麻酔科医の特性を生かし、新生児蘇生や急変妊婦の対応にも積極的に参加しています。北里大学病院産科麻酔部門スタッフは、新生児蘇生法、妊産婦急変時対応についての有資格者であり、インストラクターとして病院内外の医療者に対する教育活動にも関わっています。
  5. 合同カンファレンス
    麻酔科医が産科病棟に常駐しているメリットを生かし、産科医、新生児科医、助産師などと合同のカンファレンスを開催しています。ハイリスク妊婦の情報共有、麻酔科的リスクの評価、対応の協議や助言などを行い、しっかりとした術前評価の下、安全な麻酔の提供に心がけています。

診療実績

麻酔実績(件) 2016年(分娩916件) 2017年(分娩864件) 2018年(分娩1005件)
無痛分娩 330 305 374
帝王切開術 321 290 380
頸管縫縮術 34 27 28
子宮内容除去術 51 49 52
胎児外回転術 1 3 2

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