臨床ナースのための海外研修ツアー 研修参加報告

海外研修ツアー

北里大学看護学部が隔年で実施しているUCLA夏期特別研修に合わせて臨床ナースの海外研修を北里大学看護キャリア開発・研究センター主催のもとで実施しています。毎回、10名弱の看護職員が参加し、米国の看護の実際に触れる機会となっています。今年度の夏、本研修に参加した病棟看護師が得た米国の看護システムや研修の学びについて報告します。

研修先

米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)看護学部およびUCLA医療センター

研修期間

平成24年8月19日~8月27日

研修参加者

北里大学病院看護師3名、北里大学東病院看護師1名、他病院専門看護師1名、他大学学生1名

研修スケジュール

20日
HIV/AIDS・薬物依存に関する講義
21日
社会格差と看護・ペインマネジメントに関する講義、Union Rescue Mission・ロサンゼルス子ども病院見学
22日
スピリチュアルケア・在米日本人看護師の講義、UCLAメディカルセンター見学
23日
上級看護実践シンポジウム
24日
緩和ケア・看護倫理に関する講義

参加の動機

私は平成21年に入職し、脳神経外科病棟に勤務しています。昨年、救急病棟で1ヶ月間研修する機会がありました。他部署を経験することで自身の職場の良さや改善点に気付くと共に、働き方や職場の風土の違いを実感しました。仕事を始めて4年が経ちましたが、看護師として今後、自分がどうありたいのかを漠然としか考えていませんでした。そんな中でこの研修の機会を知り、自身のキャリアアップについて考えを深めたいと思い参加しました。

研修の学び

米国の緩和ケアは早期から介入を始めることが多く、患者が設定した目標にむけたサポートを積極的に行なっています。「緩和ケアにおいて患者の自律性(自身での決断・行動など)に敬意を払う」という考え方と、患者だけでなく医療者も緩和ケアの対象となることを学びました。これまでは、緩和ケアというと苦痛が強くなってから介入するという印象を持っていましたが、認識を新たにすることができました。

米国ではNP(ナースプラクティショナー)・CNS(専門看護師)・CRNA(麻酔専門看護師)・CNM(助産師)など上級看護師の資格が様々あること、正看護師も免許の更新制度(2年毎に30時間の講習が必要)があり専門性の高いケアを行なっていることが分かりました。一方で、日本の看護体制は、米国ほど上級看護師の制度は整っておらず、医療制度や看護師配置数の違いから勤務状況は米国に比べ過酷であると言えますが、正看護師が専門性の高いケアを実践しており、専門に限らず幅広いケアを展開している場合も多く、制度はこれからであっても細やかなケアを実践できる環境なのかなと感じました。

UCLAメディカルセンターは全病室が個室ですが、病棟の廊下には『患者満足度評価』が掲示されていました。

評価されることでの医療・看護の質の向上を図るだけでなく、患者側も医療へ参加していると思えるメリットがあると感じました。また、米国でも看護師の離職は大きな問題であり、『マグネットホスピタル』システムが広まっていました。これは、「看護師が集まる・看護師の離職が少ない病院では看護師がやりがいをもって仕事に取り組んでいる傾向がある」というデータから生まれた考え方で、看護師をひきつける病院は質の高い看護が提供でき、患者満足度が高いことに繋がっていると考えられていました。他国での認定取得は殆んどありませんが、日本でも着目している病院が増えていると聞きました。私は、日本では相手から客観的に評価される機会が少ないように感じますが(病院機能評価はありますが)、看護師の離職を減らしたいという同じ課題を抱える国で導入されているこのシステムに強い関心を持ちました。

研修を終えて

講義・見学と濃密なスケジュールでしたが、毎日が刺激的であっという間の研修でした。現地で出会った看護師の方々は自分の仕事に誇りを持ち、信念を持って働いており、私たちにも丁寧に対応して下さいました。また、難しい講義内容や見学コースも全て通訳をして下さったスタッフの方々にも大変お世話になり感謝しています。同行した皆さんとは、互いの看護観やこれからのキャリアアップについて語り合い、多くの刺激を受けました。この研修がもっと広まって、キャリアアップに悩む多くの方が参加できると良いと思いました。

7A(脳神経外科・呼吸器内科)横田さおり

2013.01.21

ページの先頭