新医療技術導入 研修報告

研修先
オースティン病院(オーストラリア、ビクトリア州)
研修目的
Rapid Response Systemの構築
Rapid Response Teamの運営の実態の習得
Rapid Response Teamの運営、活動の導入
研修期間
2011年1月14日~2月2日
研修参加者
看護師、医師、理学療法士 3名

背景

私は、平成8年に入職し脳神経外科病棟での勤務を経てICUに異動し、平成16年に集中ケア認定看護師の資格を取得しました。2002年、救急科の医師と理学療法士と臨床工学士と共に呼吸チーム、RST(respiratory support team:呼吸療法サポートチーム)の前身を作りました。さらに、集中ケア認定看護師として、院内の医療の安全や質の維持、向上の為に自分に何ができるか?を考えたことを発端として、RSTを立ち上げることができました。RSTは、院内の人工呼吸管理やICUから一般病棟に退出した患者さんの呼吸管理が安全に行われているかを確認し、必要なケアを行います。最近では、病棟から『呼吸が悪いから見てほしい』、『人工呼吸器を装着しないための看護ケアを教えてほしい』、『挿管をするから支援してほしい』など、多くの相談があります。

欧米では、10年以上前から、RRS(rapid response system: 院内迅速対応組織)とその概念があります。『何かおかしい』と感じた段階でRRSが察知し、原因検索や的確な対応がなされ、院内心肺停止を予防するという考えです。日本では、最近ようやく多くの学会で注目されるようになりました。当院のRSTは、RRS的な活動を担える『組織員』と『思想』を持って実践していると考え、今回Australiaへ研修に行きました。

報告

Austin HospitalのRRSは、10年以上前から存在しICUのスタッフが運営していました。一般病棟で患者の具合が悪くなると、躊躇なくチームが招集され、チームは専用カート(モニターや処置物品)を持って現場に向かいます。到着すると、現病歴や経過を説明されチームの医師が診察し、治療をします。診察だけで帰るときもあれば、処置をしてそのままICUに移動するなど、患者の状態に応じて施す対応は様々でした。

我々は、約3週間の研修でしたが、その間のコール数は90件以上、多い日は1日10件以上要請されました。

『呼ぶ事は普通』、『呼ばれる事は普通』、この感覚を一般病棟もチームも持っている。これは、10年間試行錯誤しながら根付いた結果とも言えます。『病院は、医師や医療者の為にあるのではなく、患者の為にあるもの。』『RRSを呼ぶコールも患者の安全の為にあるコールであり、医療者のプライドなどに阻害されてはいけない』と、ディレクター医師は話していました。

私は、海外研修で自分の視野の狭さや今後、何を実施すべきなのかがはっきりしました。医療・命についての考え方も、幅広く捉えられるようになりました。

Austinのスタッフには、本当に親切にお世話していただき、感謝しています。そして、入職から今までの間、自分の好奇心や可能性にいつも良き理解者としてチャンスをいただける北里大学病院に感謝しています。

(RST/RRT室・集中ケア認定看護師 森安恵実)

新医療技術導入

2011.05.09

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