海外看護研修(メイヨークリニック)への参加報告

2017年9月から10月にかけて米国のメイヨークリニック(ミネソタ州ロチェスター)での3週間の海外看護研修に参加する機会を得ましたので、その概要をご報告いたします。

海外看護研修の様子1

メイヨークリニックは、米国で最初にマグネットホスピタルの認定を受けた5病院の1つ(2016年には5回目の認定を受けた)であり、U.S. NEWS & WORLD REPORT誌の2017-2018年の病院ランキングにおいて全米第1位を獲得するなど、世界的に知られる医療機関です。研修中に宿泊したホテルには、メイヨークリニックに通院する患者と家族が数多く宿泊しており、その駐車場にとめられた車のナンバープレートの多様性(米国では州ごとにナンバープレートのデザインが異なる)からも、メイヨークリニックが全米から患者が集まる病院であると実感できました。

海外看護研修の様子2

3週間の研修は、事前に提出した研修目的に沿って、研修生それぞれの個別プログラムが用意されます。プログラムは主に、臨床現場でのシャドウイングもしくはディスカッションと、専門家による講義で構成されており、実際の看護実践を自分の目で確認でき、様々な分野のエキスパートに直接質問ができるという非常に充実した内容となっていました。私の場合は、主に看護情報分野での研修を要望し、病棟や外来でのシャドウイングを通して情報システム活用の実際を確認できただけではなく、 Informatics Nurse Specialist(米国では、1995年から看護情報分野の専門家が認定されている)とのディスカッションを通して専門家の具体的な役割を知ることができました。

研修を通して最も印象に残っているのは、「看護師がベッドサイドでの看護業務に専念できるように」というコンセプトのもとに、充実した情報システム環境が整えられていたことです。例えば、一般病棟の全病床には電子カルテ端末が備え付けられているだけでなく、電子カルテに自動連携するバイタルサインモニタ(看護師がバイタルサインを測定するだけで、電子カルテにその結果が記録される)が配備されており、これにより安全かつ効率的に看護業務を実施できる環境が整えられていました。また、看護師の人員配置を最適化するため、患者分類システムを用いた業務量評価と必要人員計算、それをもとにしたスタッフの派遣調整が日常的に実施されていました。

海外看護研修の様子3

これらの環境を実現するため、メイヨークリニックではロチェスターだけで約20名のInformatics Nurse Specialistが所属しており、プロジェクトチームごとに活動が行なわれています。2017年から2018年にかけて電子カルテの更新が順次進められており、次期システムではメイヨークリニックヘルスシステム(アイオワ州、ミネソタ州およびウィスコンシン州の70の地域から成るクリニック・病院・その他医療施設のネットワークであり、2017年現在80以上の医療施設で構成される)を含む全メイヨークリニックで同一の電子カルテが使用できるようになります。

私が直接話すことができたInformatics Nurse Specialistの1人は、このメイヨークリニックヘルスシステムを統括するプロジェクトに所属しており、収集されるデータをもとに、高血圧や糖尿病、喘息等の慢性疾患の重症化を防ぐための管理(ハイリスク患者の洗い出しと介入支援)を行なっていました。これは、Population Health Managementと呼ばれ、医療費を削減するアプローチの1つとして日本でも注目されている取り組みの1つです。

この他にも、医療の質向上や研究推進のための組織的な取り組みや、それに関わる様々な専門家の活動について学ぶことができました。メイヨークリニックで実現されていることをそのまま全て導入することはなかなか難しいですが、今回の研修での成果を現場に少しでも還元できるよう、そして自分自身の専門性を高められるように引き続き努力したいと考えています。

海外看護研修の様子4

本研修は、公益社団法人木村看護教育振興財団の助成を受けて参加したものです。本研修の機会を与えてくださったメイヨークリニックおよび木村看護教育振興財団の関係者の方々に深く御礼を申し上げます。

看護部情報システム担当(看護師・医療情報技師)
清水 將統

2017.12.20

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